SBW選手が子どもにメダルをあげたのは
先日閉幕したラグビーのワールドカップの決勝戦の後に小さなハプニングが起こったことは、日本でも報道されていたと思う。
優勝したオールブラックスの選手にメダルが渡された後、選手達がスタジアムの中を歩きながらファンの声援に応えていた時、突然会場から走り込んできた少年が警備員にタックルされて、選手達の目の前で押し倒された。
その少年をSonny Bill Williams(SBW/ソニー・ビル・ウィリアムズ)選手が助け起こし、保護者の所まで連れて行って、そしてそこで自分の首にかけていた優勝メダルを少年にあげてしまったのだ。
新聞やテレビ、ネットでは、このSBW選手の行為を讃えるニュースが流れ、ワールドラグビーは、SBW選手に新たに優勝メダルを授与した。その授与会場では、会場全体でスタンディングオベーションを行ったそうだ。
いろんな意見があるだろう。この少年の愚かな行為を強く非難する方もいるだろうし、警備員のタックルが行きすぎだという意見もあるかもしれない。また、こんなことをすれば、会場に走り込んでくる愚かな子どもが増えるに違いない、と言う人もいるだろう。
ただ、ニュージーランドで18年以上暮らして、子育てもしている私の感覚では、おそらくニュージーランドの人達は、この子どもの愚かな行為を責めるよりも、SBW選手のとった行動を賞賛する人が圧倒的に多いだろう、と思う。
何故なら、ニュージーランドの多くの人達の感覚では、まずは、「子どもは愚かな行為をするものだ」という前提があるからだ。子どもは間違いを起こす。判断も適切ではないことも多いし、なんでそんなことをするのかということを平気でする。それが子どもだ。そしてその前提の上で、子どもは社会全体で育てていく必要がある、という共通の認識も持っている。
だから、愚かな行為をした子どもに、周囲の大人がどう接するのか、そこが問われ、人々が注目する。
子どもの行為は愚かだろう。でもそれはそれで一旦受け入れよう。何故なら子どもは愚かな行為をするものだからだ。そして、こんな子どもを放っておく親の責任だけを厳しく追及するという態度ではなく、そんな子ども達を周囲の大人達がみんなでどう育てていくのか、それを考えて行動しましょう、という方向に話を持って行く。
だからこそ、SBW選手の取った行動が賞賛されたのだと思う。
以下の動画をよく見てみると、オールブラックスの一人、Liam Messam(リアム・メッサム)選手が自分のニット帽を少年の頭にかぶせているのもわかる。
優勝後にスタジアム内に突然現れて警備員に取り押さえられた少年。その少年に対して、とっさにいろんな選手が取った行動を見て、ニュージーランドの子ども達に対する大人の態度について、考えさせられた。
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