全力で走り抜ける

長期留学生の中にもラグビー留学生が何人かいるけれど、7月8月の日本の夏休みの期間は、短期のラグビー留学生達もニュージーランドにやってくる。

先日、ロトルアボーイズハイスクールのラグビーアカデミーの練習が始まってすぐのウォーミングアップを見ていた。留学生達はみんなで一緒に軽くジョギングをしていたのだけれど、先生が急に「ダッシュでエンドラインまで走れ!Go! Go! Go!」と叫んだ。彼らがいる位置からエンドラインまでは40メートルくらいだ。

その言葉を聞いた瞬間みんな一気に走り出したのだが、何人かは誰が見ても全速力で走っていたが、何人かは80%くらいの力で流して走っていた。そして、また何人かはエンドラインを越えるところまでスピードを落とさずに走り抜けていたのだが、何人かはエンドラインの手前でスピードを落としていた。

ただそれだけのことなんだけれど、その時に全速力でエンドラインを越えるところまで走り抜けた留学生達と、80%の力でエンドラインの手前でスピードを落とす留学生達とでは、1日後、1週間後、1ヶ月後に身についているものがおそらく大きく異なるだろう、と思った。ほんの40メートルをダッシュするだけだけれど、そこで全力で最後まで走り抜けるのか、流して最後まで走り抜けないのかで、極端に言えば、将来に身につけている力が変わる。

ひょっとしたら、その時は体調が悪くて全力で走れなかった学生もいたかもしれない。また、たまたま流して走っていただけかもしれない。いつも何もかもに全力で取り組むなどということは、なかなか難しいのかもしれない。

でも、ラグビー留学生は、ラグビートレーニングをすることが留学の大きな目的の一つだ。せっかくニュージーランドまで留学に来てラグビートレーニングを受けているのだから、一つ一つの小さな練習に対しても、全力で取り組むことが大切だ。

以前にもこのブログでも書いたけれど(「NZジュニアラグビーコーチングに学ぶ」)、ニュージーランドのラグビーの指導方法と日本の指導方法は、少し違う。簡単に言えば、「決められたことをきちんと決められたとおりにできるようにする」日本の練習に比べて、「自分で考えて判断する力をつける」ニュージーランドの練習、と言えるかもしれない。また、ニュージーランドのコーチや先生は、トレーニング中に大声で怒鳴ったりしない。

だから、40メートルのダッシュで、全速力で走らなくても、最後まで走り抜けなくても、「こらぁ!気合を入れて走れ!」などと言われることはない。

でも、怒られないことがわかっていても、何人かの留学生は、いつも全速力で最後まで走りぬけるのだ。彼らは、この小さな一つのトレーニングが、誰のためでもなく自分のためにやっていることが、よくわかっているのだ。だから、何も言われなくても必死で走る。コーチに怒られるから走るのでもなく、人が見ているから走るのでもない。自分のために走るのだ。自分で考えて、自分にとって何が必要かがわかっていて、それを実行しているのだ。

誰かに何かを言われなくても、自分で考えて、やるべきことの一つ一つに対して、自分のために、最後まで全力で走り抜けることが大切。ラグビートレーニングだけではなく、留学生の生活全てに対して言えることだと思う。

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