VR留学?

時代はVR(バーチャルリアリティ)だそうだ。

ウィキペディアによると、VRとは

「現物・実物(オリジナル)ではないが機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術およびその体系。」

と難しい定義が書いてある。

VRゴーグルとかVRヘッドセットとか呼ばれる、両目を覆う立体アイマスクのようなものをつけて、仮想空間を視覚的に感じるものが、今は一般的だろう。調べてみると、安いものだと数千円からあって、3万円から5万円程度のものが売れているようだ。

これをつけると、自分があたかもそのバーチャルな空間にいるように感じる。複数の人が同じ仮想空間を見ることで、一緒にそこにいるような同じ仮想の体験をすることもできるのだろう。

今は、ゴーグルやヘッドセットを使って視覚で感じるだけだけれど、近い将来は、聞いたり、触れたり、におったり、味わったり、そんなことをVRでできるようになるかもしれない。

そうなれば、VR留学という商品もきっと登場するだろう。日本にいながらニュージーランドに留学している「体験」ができる。VR語学留学なら、世界中からゴーグルをつけた仮想「留学生」達が語学学校の教室に仮想的に集まって、授業を受ける。もちろん質問もできるし、休み時間は他国から来た人達と一緒に遊ぶこともできる。

今、米国の大学などがネットで通信授業を行い単位も出しているところがあるけれど、それもVR留学でもっと現実に近い感覚で受講することができるようになるだろう。

語学学校や大学など、英語や専門知識を身に付ける留学であれば、プラクティカルな実験がある学部や身体を動かすスポーツ関係学部を除くと、VRは一見留学と相性がいいように見える。

でもやはり、VRと実際の留学では、決定的に違うところがある。

それは、自ら場所を移動すること、そして自ら全く異なる連続した時間の中に身を置くことだ。

VR留学は、ゴーグルを外せば現実だ。外した後は、自分は日本の部屋にいて、目の前にゴーグルが転がっている。いつでも自分でゴーグルを外して現実に戻ることができる。

でも、実際の留学はちがう。

留学にいく前に、いろんなことを考えて、自分で調べたり、人に相談したりして、大きな決断をする。そして出発する日を不安を抱えながらカウントダウンして待って、一人で飛行機に乗ってやってきて、ホームステイに滞在する。

日本の空港でパスポートを出してチェックインし、隣に知らない人が乗っている飛行機で11時間過ごし、機内食を食べ、日本語字幕のない映画を見る。空港に到着したら、訳がわからないまま人が行く方についていき、イミグレで緊張しながら質問に答え、荷物が出てくるのをドキドキしながら待って、税関と検疫を抜けて、到着ロビーで迎えにきてくれた人に会う。

ステイ先では、会ったこともない人に迎えられ、どこかわからない部屋を自分のものだと言われ、その日からそのベッドで横になる。

学校初日も訳がわからず、でも逃げ出すこともできず、知らない人に笑顔で話しかけられ、思い切って自分も誰かに話しかけてみる。

ホームシックになっても帰ることもできず、自分で何とかしなければ前に進まないことを学び、時間が経って、自分で何とかやってみて、自己肯定感を得ながら、自信をつけていく。

日本とはことなる時間の流れを生活の中で感じ、日本では出会わなかった人達と一緒に自分だけでは自由にならない時間を過ごし、日本にはしばらく帰れないと腹をくくり、その中で自分でできることを一生懸命考えて、一日一日を過ごしていく。

それがリアルの留学の「経験」だ。VR留学ではできないだろう。

おそらく後数年もすれば、実際にVR留学も出てくるだろう。でもそれでも、実際に日本を出て海外で滞在する留学を選ぶ人も多いに違いない。

VRではできない「経験」をするために。

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