最近の流行りなんてもうない

まだ、みんなが地上波のテレビを見て、新聞を購読し、何十万部も発行されている雑誌を買って読んでいた時代は、職場や学校で共通の話題があった。

昨日のテレビドラマや、新聞に載っている事件、最近流行っているファッションなど、テレビや新聞、雑誌に目を通している人なら誰もが知っている話題があった。

しかし、もう10代の頃からスマートフォンを持つのがあたり前になり、高齢者と呼ばれる人たちまで朝から晩までスマホの画面を眺めている。そして自分が興味のあるニュースや情報しか目にしなくなった。

自分では「最近、こんなことが流行っているんだ」とか「こんなニュースが話題になっているんだ」とか、「世間ではこんなことをみんなが言っているんだ」と思っていることを、他の人が全く知らなかったりする。

そして、「日本中あるいは世界中で今これが流行っている」というものがどんどん少なくなってきている。

「いや、そんなことはないよ。最近、こんなことが流行ってるんだよ。だって、いつも自分のスマホでは出てくるもの」という方もいるだろう。でも、職場や学校で、あるいは一緒に暮らす家族の一人に、「最近これが流行ってるんだね」と聞いてみると「何それ?」と言われることもあるだろう。

そして驚く。自分では「世界中でそれが流行っていて、誰もが知っている」と思っていたことが、実は自分のスマホの中にだけ送られてきた情報だということに気づく。

これがいいとか悪いとか、そんなことを言っていてももう仕方がない。そんなシステムの中で生きていることを自覚して、じゃあ自分はどのように生活していくのかを、改めて考えてみる必要があるのだろう。