帰りたくないホームシック
小学生や中学生の年齢で留学に来ると、短期留学でさえホームシックになる人が多い。
ただ、ホームシックも人によって少し違う。最もわかりやすいホームシックは、「もう家に帰りたいです。ここにいるのは嫌です。」と目に涙を浮かべながら口に出して言うホームシックだ。まさにホームシックそのもので、わかりやすい。
ただ、今までにたくさんのホームシックを見てきたけれど、そういったストレートに言葉にするホームシックは実はそれほど多くない。
ホームシックになって日本の家族に連絡をする時には、年齢によっては、「帰りたい、もう嫌だ」ということを避けようとする場合も多い。ほんの数日前に意気揚々と日本を旅立ったのに、すぐに「帰りたい、嫌だ」というのは、やはりプライドが傷つくのだろう。
だから、日本の家族には、「現地の友達にからかわれたり、いじめられたりする」と表現したり、「誰も助けてくれない」という言い方をしたり、「ステイ先の人が冷たい」と言ったりする。
確かに、片言の英語で話をしたときに、「えっ?何?なんて言ったの?」と聞き返されることもあるし、挨拶として肩をたたかれたりすることもある。また、授業中先生やクラスメイトが何を言っているのかわからずに孤独を感じることもあるし、ホームステイファミリーと意思の疎通がなかなかできないこともある。
そういう経験をホームシックの学生は「いじめられる」とか「助けてくれない」とか「冷たい」と表現する。実際には、いじめられてもいないし、助けてくれる人も多いし、温かく接してくれているにも関わらずだ。
ホームシックの学生のそういう言葉の裏には、本当は、「お母さん助けて!」という感情がある。「ひとりぼっちだ。帰りたい。お母さんに会いたい。」という気持ちをストレートに表現せずに、周囲の人達が自分に嫌なことをする、と言うことで、日本の家族の気持ちを引き、助けるために何かをしてくれることを期待する。
もちろん、実際にいじめられていたり、助けてくれる人がほとんどいなかったり、冷たくされていることもあるかもしれないけれど、それは学校やステイ先に行ってみればすぐにわかるし、本人や周囲の話を聞いてもだいたいわかる。
だから、留学をスタートさせてすぐに、「友達にからかわれる」とか「誰も助けてくれない」とか「周囲の人が冷たい」と留学生が言い始めたときには、事実を確認するとともに、まずはホームシックも疑うべきだ。
留学してすぐに「いじめられている」とか「周囲の人が冷たい」という連絡があると、親御さんはとても心配だと思う。でもそこはグッと我慢して、落ち着いて、「おそらくホームシックだろう」と考えて、事実を確認しながら、「お母さん助けて!」というお子さんの気持ちを読み取っていただくのが良い。
そしてその時に、親御さんがでんと構えて、落ち着いていれば、その気持ちが留学生にも伝わり、数日もすれば、ホームシックもだんだん消えていく。
現地で留学生を見ている我々は、まずは事実を確認するところから始めるけれど、ホームシックから来ている言葉の可能性も十分考えて行動するようにしている。そして、ホームシックの留学生には、よく話を聞いて、できるだけ的確なアドバイスと対処をする。後は、本人に我慢する部分は我慢してもらい、行動する部分は行動してもらうことを期待する。
「家に帰りたい」と言うばかりがホームシックではないのだ。
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