想像には、経験と知識が必要

このブログで以前にも書いたかもしれないし、弊社ウエブサイトの会社情報にも掲載しているけれど、私たちは留学生たちに、留学を通して「自分で考える態度」を身につけてほしいと強く願っている。

留学をすると、環境が大きく変わって、誰もがまずは自分について考えざるを得ない。自分の性格、自分の身体能力、自分の考え方や感じ方、自分の技能、そして自分の限界などについて考える。人前で英語をどんどん使うことができずに自分の気づかなかった性格を発見したり、得意なスポーツで能力を発揮できなかったり、ずっと自分が当たり前だと信じていたことが当たり前ではなかったり、器用な自分に気がついたり、いくらやっても届かない世界があることがわかったりして、「自分って、こんな人間だったのか」とか「今から自分はどんな人間になろうとしているのか」「自分はどこに向かおうとしているのか」など、自分について深く考える。

そうやって留学生活の中で自分について考えているうちに、多くの人が今度は周囲の人たちについて考え始める。同じ留学生でも他の国から来た人がどんどん英語を話しているのはどうしてか、自分が能力を発揮できないスポーツでいとも簡単にプレーをしている人がいるのはなぜだろうか、自分が理解できないような考え方や感じ方をする人たちがなぜたくさんいるのか、自分にとっては簡単なことができない人がいるのはなぜか、自分の限界と他人の限界はどれ程違うのだろうかなど、周囲の他人のことを考える。また、遠く離れた家族、友達、応援してくれる人たちについても考える。今まで空気のように感じていた家族や友達の大切さ、一人では生きていけない時の周囲の人たちのありがたさ、そんなことについても考える。

こうやって、留学して最初はみんな自分のことを考え、多くの人が次第に周囲の人たちのことを考えるようになる。でも、そこで自分のことや周囲の人たちのことを「どう考えるのか」がとても大切だ。特に自分のことだけではなく、自分の周りにいる人たちのことをどのように考えるのかが、今後の変化に大きく影響する。

周囲の人たちのことを、単に自分との関連で自分の物差しだけを使って考えるのか、あるいは、周囲の人たちの視点やバックグラウンドまで考えを広げるのか。そこが大きな違いだ。留学して、異文化、異言語の中で生活をして、自分のことを考え、周囲に考えを広げるとき、今まで持っていた物差しを一旦捨てて、周囲の人たちのバックグラウンドを「想像」することが大切だと私は思う。

文法や発音などお構いなしにどんどん英語でコミュニケーションを取ろうとする留学生たちは、どんな環境でどんな生活をしてここまで来たのだろうか、自分ができないプレーを簡単にしてしまう人たちは、どんなことを考えてどんなトレーニングをしているのだろうか、自分が理解できないことを言ったりしたりする人たちは、何を信じて何を基準に生きているのだろうか、簡単だと思うことができない人は何があったのだろうか、自分の限界と違う限界を持つ他人はどうやってそこまで到達したのだろうか、と他人の過去や環境や頭の中や感じ方を、自分と異なる物差しを探しながら「想像する」。そうすることで、今までの自分の価値観では計れない世界と、そこで生活をしている人たちがいることに思いが至り、今までの自分の世界以外にももっともっと広い世界があることを知る。

そうして、他人のバックグラウンドを深く広く想像するようになって、他人を理解する第一歩を踏み出すのだと思う。

そして、他人のバックグラウンドを深く広く想像しようとすれば、やはり自分の経験と知識のなさにどうしても気づく。いろんなバックグラウンドを持った他人のことを「想像」するには、「知識」と「経験」が絶対に必要だ。

今まで住んでいた自分の世界の狭さに気づくためには、いろんな人とかかわる経験が必要で、周囲の他人のことを考え感じようとすれば、他人のバックグラウンドに対する知識が必要だ。自分が生まれ育ってきた場所以外はどんなところがあるのか、他人が信じる宗教とはどんな内容なのか、他人が判断を下す基準は何に基づいているか、同じ人間でも根本的な体の違いや感じ方の違いはあるのか。そんな疑問に対して、知識を得ることで、さらに周囲の他人への想像が深く、広くなっていく。

留学は経験だ。留学中の他人とかかわる経験を通じて、他人のことを想像し、幅広く深い知識を得ていく。そのためには、留学の最初にいろんなショックを受けて自分のことを考え、それから周囲の人に目を向けて、自分の世界と周囲の世界を理解しようと知識を得ながら考える。それを継続して繰り返していくことで、留学を通して成長でき、日本で生活するのとはまた違った人間になって行くのだと思う。

2013年のダイレクターブログは今回で終了です。来年2014年は1月中にスタートする予定です。今年もご覧頂き、誠にありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください。

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