手にメモる

ニュージーランドに移住した当時、驚いたことはたくさんあるけれど、そのうちの一つは、「手にペンでメモる」ことだ。

例えば、エレクトリシャン(電気工事をしてくれる人)に会って、次のアポイントを取ったときに、紙にボールペンでメモるのではなく、手の甲や手のひらにメモを書いた。こちらが「えっ?」という顔をしていると、「大丈夫、心配ないよ」とニコニコしていた。

本当に大丈夫だろうか、と思ってアポイントの日のその時間に家で待っていると、待てど暮らせど来ない。電話をするとやっぱり忘れていた。おそらく、何でもかんでも手にメモるので、何がなんだかわからなくなったのだろう。もしくは、手が汚くなってゴシゴシ洗って消えてしまったのだろう。予想通りだった。

こんなふうに、18年前には手にペンでメモを取る人がニュージーランドにたくさんいた。そして約束の日時には誰もやってこないのだ。

先日、水道工事をしてくれるプラマーと会って大事な用件を伝えたら、その場でペンで手にメモを取った。18年前と違い、今はスマホのカレンダーアプリやメモアプリもあるだろうし、録音も簡単にできるにも関わらず、手にペンでメモった。

大丈夫だろうか、と思っていたら、きちんと大事な用件を覚えていてくれた。18年前のエレクトリシャンと同じように、手にペンでメモっていたのだけれど、18年前よりもきちんとしていた。今は手にペンで書いたメモさえもクラウドにバックアップをされる時代になったのか、などと考えたけれど、そのプラマーがきっときちんとした人だったのだろうと思う。

スマホが普及しても、ニュージーランドには手にペンでメモを取る人がまだまだたくさんいるのだろう。

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