もう一泊
留学生に会いにクライストチャーチに行ってきた。そのことについてはまた、改めてここでも書きたいと思う。
火曜日の朝ロトルアを飛行機で出発し、クライストチャーチに2泊して、木曜日の夜にロトルアに戻る飛行機を予約した。ロトルアとクライストチャーチの間には、一日に数本の飛行機が飛んでいるけれど、その半分くらいはウエリントン経由だ。
火曜日にロトルアからクライストチャーチに行く便は直行便で1時間50分の旅だったけれど、帰りはあいにくウエリントン経由で、午後4時にクライストチャーチを離陸し、5時にウエリントンに着き、約1時間待って午後6時過ぎにクライストチャーチを出発、7時過ぎはロトルアに到着する、予定だった。
予定だった、というのは、ウエリントン空港が霧の影響で、飛行機がなかなか降りられず、上空で何度も旋回を繰り返し、やっと降りたのが午後5時50分。急いでロトルア行きの搭乗口に行くと、案内にはDelayed(遅れています)の文字。係の人に聞くと、「もう少し待ってください」と言う。しかたがないので家に電話を入れているとそこにアナウンスがあり、「ロトルア行きの飛行機は今日はキャンセルになりました」と静かに言う。「代わりの飛行機はニュージーランド航空のフリーダイヤルに電話をして自分で取ってください」とアナウンスは続いた。
ここはニュージーランド。「どうなっているんだ!」などと係の人に詰め寄っても何も解決しないし、そんなお客さんは一人もいない。みんな自分のことは自分でする、という態度が身についていて、あちこちで携帯電話でフリーダイヤルに電話をする姿が見られた。霧で飛ばないのだから仕方がない、ということだ。
私は、チケットだけではなくて滞在先も確保しなければならなかったので、急いでカウンターに行くと、10人位の人がすでに並んでいた。一人ひとりかなり時間がかかるけれど、みんな何も言わずに待っている。私の番が来てロトルア行きはいつ取れますか、と聞くと「明日の午前11時過ぎです」。しかたがないのでその便を予約し、宿泊施設も紹介してもらおうと聞くと、「今日はウエリントンはすべての宿がフルブッキングです」とカウンターの向こうから私の目を見つめて係の人が言う。なんでも朝から昼まで空港が霧でクローズしていたそうで、ウエリントンを出られないと思った人達がみんな滞在しているとのことだ。
今度は、しかたがないので野宿します、というわけには行かないので、何とかならないか、と聞くと、「少し時間がかかるので、私のオフィスで待っていてください」と係の人のオフィスに通してもらって待つこと30分、その人がやってきた。「一つだけアコモデーションが取れますが、2ベッドルームのアパートです」と言われ、一人でそんなに広い部屋に泊まれるのはラッキーだ、と思っていると、係の人がこう続けた。「ただし、もう一人の男性のお客さんと一緒に泊まることになりますが、それでもいいですか?」
それでもいいですか?という疑問形になって入るけれど、ウエリントン中フルブッキングなのであれば、そこに泊まるか野宿するかどちらかですよ、と言われているのと同じだ。答えはイエスしかない。10分後には、初めて会う40代の男性と二人でシャトルバスに乗っていた。
2ベッドルームのアパートメントは、とても広くて快適だったけれど、どこの誰かわからない人と一緒に泊まるのは、少し不安がよぎる。でも、後でゆっくりと話を聞くと、その男性は米国から来たITエンジニアで、ニュージーランドに1週間仕事で滞在している途中だとのことだった。翌日の朝食時には話も弾み、最後は名刺を交換して、またどこかで会うことがあるかも、と言って別れた。
「それはひどい!」とか「そんなの耐えられない」とかいろんなご感想があるだろう。私も最初は、「ありゃりゃりゃりゃ」と思った。でも、霧で飛行機が飛ばなくてアコモデーションがフルブッキングなら、それしか選択肢はない。だから、これを楽しんでみよう、と途中で気持ちを切り替えた。その男性もひょっとしたら悪い奴かもしれないけれど、おそらく相手もそう思っているのかもしれないし、これも何かの縁と思って楽しく過ごすことができれば、それが一番だ。そういう態度で過ごしていると、相手の人の不安もなくなるし、自分も楽しくなるし、いい経験、いい思い出にもなる。
ニュージーランドで暮らしているとほんとうに、予期せぬいろんなことがあるけれど、何かあった時には、一呼吸置いて、ゆっくりと頭を切り替えて、全てを楽しんでみようと思って、そういう態度で臨むのが一番うまく行く、ということを、改めて思い出した。
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