失敗させてください

先日、長期の高校留学生のご家族がニュージーランドにいらっしゃって、夕食をご一緒させて頂いた。

とても楽しいご家族で、いろんな話をしながら、楽しい時間を過ごした。

その留学生の話をしている時、お父さんが「留学中はいろんな失敗をすればいいんです。」とおっしゃった。「失敗するところからスタートです。そこから学んで成長できるんですから」。

「だから、この人には失敗をさせてください。」とも。

もちろん、わざと失敗するように仕向けてくださいという意味ではなくて、失敗しないように先に手を打つ必要は全くありません、という意味だろう。そして、失敗した後そこから学んで成長するようにサポートしてください、ということでもあるだろう。

キックオフNZ は12年以上留学生達のサポートを行ってきているけれど、数年前までは、同じようにおっしゃる親御さんがほとんどだった。けれど最近は、「うちの子が失敗しないように、できるだけ気をつけて、オーガナイズしてほしい」とはっきりとおっしゃる方もいる。

「うちの子が他の生徒と異なることをしているのは、かわいそうだ。もっと事前に情報を与えてほしい」「うちの子がものをなくさないように、事前に何とかしてほしい」そんなことをおっしゃる親御さんが、少数だけれど確実にいらっしゃる。

そんな中、「この人には失敗させてください」とおっしゃる親御さんは、遠く離れた日本から子どもを見守る親御さんとして、強い覚悟をお持ちなのだと思う。

私も親として考えると、子どもが自分の目の届かない所にいる時には特に、いつも笑顔でいてほしいと考える。できれば全てうまくいって嫌な思いをせずに毎日過ごしてほしいと。

でも、よく考えてみれば、そんなことはあり得ない。もし全てのことがずっとうまくいってしまうと、それは子どもにとっていいことではないだろう。ましてや、周囲の大人がうまくいくように先にオーガナイズした結果だったら、なおさら子どもにとってはマイナスだ。

もちろん、安全と健康は確保しなければならない。でも、他の生徒と異なることをすることは、時にはそこからいろんなことを学ぶ機会にもなるだろう。何かをなくして困った経験をすれば、二度とものをなくさないように気をつけるようになるだろう。

長年たくさんの留学生を見てきたけれど、うまくいかない経験をした後にぐっと成長する人も多い。そして、それを遠くから「それでいいんです」と強く見守る親御さんがいらっしゃるから、成長もするのだろう。

子どもが失敗しないように、いつもハッピーでいられるように、周囲の大人が先に全てを整えてしまうことを願う親御さんの気持ちは、親の立場としてよくわかる。でも、それが本当に子どものためになるのだろうか、といつも思う。そして、失敗させてください、と言い切る親御さんの強さをすばらしいと思う。

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