何とか楽したい
ネットの広告やツイッターなどでもたまに、「○○するだけで、△△の効果がある!!」などと言うものを見かける。「今なら無料でご紹介します!」と続いているものも多い。
例えば、「集中しなくても聞いているだけで英語力が劇的にアップする!」なども目にするけれど、「そうなんだ、聞いているだけで英語力がつくんだ」と思ってリンクをクリックする人もきっといるのだろう。
確かに、英語を聞かないよりは聞いた方が英語力はつくだろうし、英語に接している時間が長ければそれだけ効果も出るだろう。ひょっとしたら、聞き流すだけで劇的に英語力がつくのかもしれない。私は試したことがないので、効果については何とも言えない。
ただ、ニュージーランドで17年間暮らし、たくさんの留学生を現地でずっと見てきた私の経験に限って言えば、集中せずに単に英語を聞き流しているだけで英語力が劇的に伸びた人は見たことがない。
やはり、自分から積極的に話しかけ、英語を聞く環境を自分で作り、英語が通じなくて恥ずかしい経験をしたり、英語が話せないことで不利益を被ったり、周囲の人に笑われたり、それでも気力を振り絞って英語を使って話しかけたり、というしんどい経験を通して、少しずつ英語力が伸びていく。
言い古されたことかもしれないけれど、楽をして何かを得るなどと言うことは、なかなか難しい。
特に英語力に限って言えば、何か一つのことをしただけで、英語力が総合的にどんどん伸びていく、などと言うことはないだろう。
例えば、15歳で長期の高校留学に来た学生で、ほとんど英語だけの環境で過ごしていても、一学年間の留学では、いわゆる「ぺらぺら」にはならない。やはり本格的に英語力がついて、友達との会話も問題なくなり、高校の授業に問題なくついて行けるようになるのは、多くの場合は留学2年目以降だ。
その上、読み書きの力は、普段の生活とは別に、自分で机に向かって英文を読んだり書いたりしないと伸びない。だから、学校で出された宿題をきちんとやって、その中で出てきた単語を全て覚え、レポートの提出があれば書き方からしっかりと勉強することで、やっと読み書きの力がついてくる。実際には、現地の英語ネイティブの学生の勉強時間の倍くらいは机に向かう必要があるだろう。
何とか効率よく楽に何かを成し遂げたい、という気持ちは誰もが持っているだろう。もしそれができるのなら、それに越したことはないと私も思うし、それが可能な物事も世の中にはあるのかもしれない。
でも、そんなに簡単に物事を成し遂げることができるのであれば、誰もがすでにやっているだろうし、誰もが簡単にできることなら、商品として売る価値もないだろう。
少し厳しいことを言えば、海外に留学に行きさえすれば英語力がどんどん伸びる、というのも、短絡的に過ぎる。
与えられた環境で、自分自身がどのようにその環境に働きかけていくのか。どれほど人と違う時間を過ごすことができるのか。どのくらいの時間強い精神力を保つことができるのか。
何かを成し遂げたり、今まで自分が持っていなかった何かの力をつけるためには、そんなこともやはり必要だと思う。
楽をして何かを得ることができます、などと言うことに、真剣に耳を傾ける前に、やるべきことがあるだろう。
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