大学入学試験が無い国

先日このブログの「小学生の放課後の勉強時間」の中で、「ニュージーランドには基本的に、中学受験、高校受験、そして日本のような大学受験がない」と書いた。

厳密に言えば、高校で学力が高い生徒達が集まるスペシャルクラスに入るための試験はあるようだし、大学の学部の中には、面接を行ったり、持っているスキルを証明するためのポートフォリオなどを提出させるところもあるようだ。でも、基本的には、入学資格単位を取得しているニュージーランドの学生は、定められた校区内の高校や、希望の大学に入学申請をすれば、よほど定員を超えているなどの事情がない限り入学は認められる。

ではニュージーランドで大学進学を目指す中学生や高校生は、何のために日々勉強をしているのだろうか、何をモチベーションとして、放課後自宅で勉強をするのだろうか、と考えると、日本の常識を持っているとすぐに答えが出ない。なぜなら、日本で、大学進学を目指す中学生や高校生が勉強をするそのほとんどの目的は、「受験」に受かることだからだ。高校受験、大学受験のときに、高い得点を取るために勉強をする。逆に言えば、日本の中学生や高校生が勉強しているときには、入学試験の本番で、出された問題を解いてできるだけ高いポイントを取得する、ということがモチベーションになっている。

だから極端な話、日本でもし今の高校や大学の授業内容とシステムのまま、入学試験無しで入学できるようになれば、中学、高校生は勉強しなくなるのではないか、と思う。「受験なしで希望する大学に入れる?じゃあ、勉強なんてしないよ」という高校生はたくさん出てくるだろう。

では、原則入学試験が無いニュージーランドで、生徒達は何故、何をモチベーションとして毎日勉強しているのだろうか。特に、大学に入ってさらに勉強して資格を取得したいと考えている学生達は、中学高校のときに何を考えて勉強をしているのか。高校での単位取得が大学入学に結びつくということはあるけれど、入学試験があるわけではないので、そこで高得点を挙げるために勉強しているのではない。だとすると、何が勉強のモチベーションになっているのだろうか。

高校での単位取得も大きな意味で含めて、おそらく、勉強することで自分の知識が増え、学力が伸び、思考力や判断力も高くなる、という、簡単に言えば、自分の能力を伸ばすこと自体が目的の一つであり、モチベーションとなっているのだろうと思う。つまり、他人のことはともかくとして、自分自身のために勉強をする。

一方日本の受験で高得点を取るための勉強だと、モチベーションは自分の外にあるし、入学試験は相対評価で上から順番に合格するので、「他人よりも」高得点を挙げなければならない。だからそこで偏差値が登場する。そして勉強をしながら常に「他人よりも」高い得点を取ることを気にかけて、それがゆえに、自分がどれほど理解ができたかよりも、偏差値の高低に注意をしながら勉強をする。つまり、自分の能力よりもどちらかといえば他人との相対評価を上げるために勉強をする。

もちろん、実際は話はこんなに単純ではないし、日本では全てそうだ、ということでもない。また、大学入学後の勉強の必要性も両国で大きく異なるので、入学試験だけが要因ではないだろう。ただ、大学入学試験が無い国とある国では、高校生の勉強に対する目的やモチベーションは、大きく異なるだろうと思うのだ。

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