「僕はAさんです」は認められない

ニュージーランドに限らずどこかの国に入国する時には、イミグレーションでパスポートを見せる。

移民局のスタッフは、パスポートをスキャンして情報を見て、写真と実際の顔が同じかどうか確認し、時にはいくつか質問をして、入国許可を出す。

また、ニュージーランドでは、パスポートとニュージーランドの運転免許証は、正式なID(Approved ID)として、アルコールの販売時に提示が求められることがある。他に、Hospitality NZ 18+ Card という年齢証明のIDもある。

これらのIDは、その人がその人であることを証明するものだ。Aさんのパスポートを持って入国する人はAさんであるし、Bさんの運転免許証をIDとして使う人は、Bさんである、とみんなが考える。

言い換えると、IDを持たずに、「僕はAさんです」と言ったり、「私はBさんです」と主張しても、だれも正式にその人をAさんだとか、Bさんだ、と認定することはできない。

つまり、その人がその人であることを証明するのは、パスポートとか運転免許証などというもので、それらは、その人以外の人達が作成したものだ。

だから、自分が自分であることを他人に証明する方法は、自分以外のだれかが作ったものを提示するしかない。

おかしくないだろうか?

自分が自分であることを、他人しか証明することができない。いくら自分が自分だと主張しても、他の人が作ったものがなければ、受け入れてもらえない。

他の人がいなければ自分として認められないのであれば、じゃあ、自分って一体誰なのだろうか?

仮に、新しく作ったパスポートに自分と違う名前と生年月日が書かれていたら、それで入国できるのだろうか。もしできるとしたら、入国した瞬間から、自分はその名前と生年月日の人になるのだろうか。

スパイ映画などで何冊もの異なる名前のパスポートを持っている人が出てくるけれど、その人は一体誰なのだろう?

自分が先にあって、そしてパスポートや運転免許証で自分であることを証明していると思っているだけで、実は逆で、パスポートや運転免許証が先にあって、そこに書かれた人として自分がいるだけなのかもしれない。

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