人はそれぞれ違った世界を生きている

うちの電話回線をファイバーにした時、電話会社から依頼されたテクニシャンがやってきた。

彼は、家の中と外で簡単な工事をしてから、電話会社に工事完了の電話をかけた。回線がファイバーに切り替わるまで15分くらい待つように、という指示があったようだ。待っている間、彼と少し話をした。

彼の家はビーチのすぐそばにあるので、庭を少し掘ったらビーチの砂が出てくる。「植物はそのまま植えても全く育たないよ」と嘆いていた。どうするの?と聞くと、ボックスを作ってそこに土を入れて育てると言う。「眺めはいいけれど、ガーデニングには全く向かないよ」と笑顔で話していた。

そんな話をしながら15分。電話回線切り替えのチェックも完了し、工事終了。彼がうちの玄関を出るときに、ふと足を止めて、「おお!なんと美しい!」と叫んだ。彼の視線の先を見てみると、小さな蜘蛛がもっと小さな生き物を捕らえているところだった。

「これを見て。きれいな蜘蛛が虫を捕まえているよ。」と感動した様子で目をきらきらさせて説明してくれた。

玄関を出たところの小さな片隅で起こっていた出来事。おそらく私は彼に言われないと全く気付かなかっただろう。でも彼は、それを見て感動していた。

彼と私とでは、普段気付いているものが全く違うのだろう、と思った。もっと言えば、彼が毎日見ているものと、私が毎日見ているものは、全く違う。言い換えれば、彼と私は、全く違う世界に生きている。

そう考えてみると、家族や友人、留学生達や学校の先生、その他自分の周囲で生活をしている人達は、同じ世界で同じものを見て生きているように思っているけれど、実は人によって、気付いているものが違うので、目に入ってくる景色も異なり、結果的に、人それぞれで違う世界を生きているのではないか、と思う。

ある人は、薄い土で覆われた庭のすぐ下にビーチの砂があることを感じながら生きていて、仕事に行った人の家の玄関先の蜘蛛の姿に感動する。もし私が同じところに住み、同じ仕事をしていても、おそらく体験できない生活だ。またある人は、14歳で留学に来て、見るもの触るもの、そして会う人全てが新鮮で、驚きの毎日を過ごしている。同じ学校で留学3年目の17歳の留学生は、また違うものに気付き、違うことを感じ、違う世界を見ている。

自分のそばにいる人達は、みんな自分と同じ世界を生きていると思い込んでいるけれど、実は、一人一人全く違う世界を生きている。

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