暴力は一切認められない

ニュージーランドで子どもを育てていると、親にとっても子どもにとってもとてもいい環境だと感じる。

もちろん自然豊かだとか、人口が少ないとか、そういった環境もいいけれど、子どもが生まれてから大きくなるまでの、この国の子どもを守るためのシステムや法律が整っていることも大きな理由だ。

出産費用は無料だし、5歳までは医療費も無料だ。また、デイケア(保育所)も週に20時間までは政府から補助が出るので親が支払う費用は無料だ。その他、出産、子育てに関しては、様々なシステムや法律が整っている。

そして、「親でも子どもに暴力を一切ふるってはいけない」というChild Abuse に関する法律がニュージーランドにはある。だから例えば、親が家の中で自分の子どもをしつけのためにたたいても、それは法律違反となる。

この法律は数年前にできた法律で、国会で審議されている間は世間でも関心が高く、いろんな人がいろんな意見を言っていた。もちろん、この法律を支持する人達もたくさんいたけれど、「しつけのためには、親が子どもを少したたくことがあってもいい。その判断は親に任せられるべきで、それを法律で国が禁止するのはやり過ぎだ」という意見もあった。

ただ、この法律は、親がしつけのために子どもの手をパチンとたたく、という場面を想定して禁止しているわけではなくて、子どもが身体的に大けがをしたり、精神的に大きな傷を負ったりすることがないように制定されている、子どもを守るための法律だ。

けれども「人が見ている場で多少の暴力は許容されているか」と言えばそうではなく、「親が子どもに対するしつけとして行う場合でも、一切の暴力は許されない」という法律だし、そんな雰囲気が世の中にもあるように思う。だから、人前で子どもを大声で怒鳴りつけたり、ましてや、たたいたりすることは、ニュージーランドではほとんど目にしない

この背景には、ニュージーランドでは「暴力はどんな場合でも許されない」という前提があるからだろう。いろんな場面を想定して「こんな場合なら、ちょっとくらいの暴力は許される」ということになると、どうしてもグレーゾーンができてしまうし、人によって基準が曖昧で、明らかにダメな場合でも、当事者がいいと言えばよくなってしまう。だから、「一切禁止」で多くの人のコンセンサスが取れているのではないだろうか。

日本では、暴力行為があっても「こんな場合だから」とか「こんな人間関係だから」という理由で許されることもあるだろう。でも、ニュージーランドでは、原則として暴力は一切認められない。ニュージーランドに滞在している人は、留学生であっても、その原則をしっかりと胸に刻み込んでおく必要があるだろう。

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