母は心配

日本とニュージーランドは距離にすると約9000キロ離れている。飛行機で約11時間。Google マップで東京からオークランドまでの経路検索をしてみると、「一致する経路がありません」という警告が出るくらい長い距離だ。

最近では、インターネットが普及して、留学生がステイ先に到着したらすぐにLINEで親御さんに無事到着の連絡もできるようになったので、数年前までほどの距離は感じないだろう。けれど、やはり物理的な9000キロは、親御さんにしてみれば気が遠くなるほどの距離だ。

特にお母様の心配は大きい。ちゃんと食事は摂っているだろうか、友達とうまくやっているだろうか、風邪など引いていないだろうか、など、心配し出すときりがないし、ネガティブな想像はどんどん膨らんでいく。

ただ、現地で留学生たちをサポートしている私たちの経験からすると、遠く離れた日本でお母様がご心配なさるような、留学生活に決定的な影響を与えるネガティブなことが起こったことはない。当然、日本との食生活の違いにおなかを減らすこともあるだろうし、友達と喧嘩することもあるだろうし、また、体調を崩すことも、長い留学生活の中では必ずある。でも、現地にいる留学生たちは、もちろん私たちもサポートするけれど、自分の力で何とか解決しようとするし、その経験の中でも成長していく。

ただ、留学生の中には、たまに親御さんのその心配する気持ちにすがってしまう学生がいる。留学生活は時には厳しくて寂しくてつらくて孤独だ。だから、日本からお母様が心配して連絡をしてくると、ついつい甘えてしまう人もいる。その気持ちはよくわかる。しんどいときに誰かが声をかけてくれたらそれに依存してしまうことは、留学に限らずよくあることだ。でも実はその依存状態が、留学生にとってマイナスの影響を与えてしまうこともある。

弊社では、留学生と親御さんと連絡を取り合って、もっともいい方法でサポートをしている。だから、たまには親御さんに「お母様がやるのではなく、ご本人にやってもらう方がいいですよ」とお伝えすることもある。それが、その留学生にとってもっともいい方法だと考えるからだ。

一方で、「留学当初は毎日何度も連絡をしてきたけれど、最近は全く連絡をしてこないんです」とおっしゃるお母様もいる。それはほとんどの場合、とてもいいことだ。留学生活が楽しく、友達との時間が多く、勉強スポーツもしっかりとやっている学生は、日本の親御さんに頻繁に連絡する時間も無いだろうし、そんな気にならないことも多いだろう。まさに、親の心子知らずだ。そしてどちらかと言えば特に男子留学生は、日本の親御さんへの連絡が減る時期と、留学生活が楽しくなっていく時期がほとんどの場合一致している。

9000キロ離れた日本でお母様、お父様は本当にご心配だと思う。でも、親元を離れた場所での経験を通して、我々のサポートの下、留学生達は毎日成長している。それを遠くから安心して見守っていただきたいと思う。

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