また陪審員に選ばれた
少し前になるけれど、ニュージーランドの陪審員に選ばれた。
ニュージーランドでは Jury Serviceと呼ばれる。
陪審員は、選挙人名簿に登録している人の中からランダムに選ばれて、裁判の2ヶ月ほど前に手紙で通知が送られてくる。永住権保持者も選挙人名簿に登録をすることができるので、陪審員の対象になる。
手紙には、返信用のフォームと封筒が入っており、指定された日に裁判所に行くことができるかどうかを記入して返信する。最近はオンラインでも参加できるかどうかを伝えることができる。
仕事の都合、健康上の問題、家族の事情、その他の理由などで、日にちを変更したり、不参加を申請したりすることができる。
また、英語を母語としない人の中には、英語力が十分ではないという理由で不参加を申請する人もいるようだ。実際に陪審員として評決を下すのに足る英語力がないと思う人は、指定日に裁判所に行ってからその旨伝えることもできる。
「参加します」と返信すると、確認の手紙が郵便で届く。それが指定された日の約1ヶ月前だ。 通常裁判は毎週月曜日の朝から始まる。
指定された日に裁判所に行くと、まず入口で全ての持ち物をチェックされる。 セキュリティの係の人が、持っているものを全てチェックし、空港にあるような金属探知のゲートも通る。
私が行ったその日の裁判はひとつだけだったけれど、陪審員として呼ばれた人が集まる部屋には、最初100人程度が集まっていた。まずは自分の名前を名乗り、リストに載っていることを確認してもらって、部屋の中の椅子に着席する。
集まった100人の中から、まずは抽選で50人が選ばれた。そこで選ばれなかった人はもうそれで終わりだ。
選ばれた50人は、実際に裁判が行われるコートルームに入場して、傍聴席に着席する。
次に、着席している50人の中からランダムに名前が呼ばれ、呼ばれた人は一人ずつ、弁護人と検察官の横を通り裁判長の方に向かって歩いて行く。その時に 弁護人あるいは検察官から「チャレンジ!」と声がかかるとその人はその場でUターンする。陪審員には選ばれなかったということだ。チャレンジという声がかからなければ、そのまま陪審員席に着席する。
陪審員席は全部で12席。全ての席が埋まった時点で、まだ呼ばれてない人は終了だ。
私は最後の最後に名前を呼ばれて、12席目の陪審員席に座ることになった。その日から金曜日までの5日間、ある事件の陪審員として裁判を 担当した。
裁判の最初に、裁判長から陪審員に注意事項が伝えられる。
例えば、 被告人や検察官 、弁護人、参考人を含めて、もし自分が知っている人や友達、家族などがいる場合は陪審員をすることができないこと、裁判の最後に12人で審議を行い、被告人が有罪か無罪かのみ判断すること、有罪か無罪かの判断は、裁判の中で提示された事実と証拠だけに基づいて行われること、裁判中は推定無罪の原則に基づいて考えること、 裁判の詳細については家族も含めて口外しないこと、その他今回の裁判の予定などについても裁判官から伝えられた。その後、陪審員たちは一旦コートルームの裏にある陪審員待機室 で待機をする。
陪審員待機室には、テーブル、椅子、小さなキッチン、冷蔵庫、そしてトイレなどが備えられている。キッチンにはコーヒー、紅茶、クッキーなどもおかれていた。ただし入り口のドアは外側からロックされていて、許可がない限り外に出ることは一切許されない。
ランチタイムは外に出ることができるけれど、陪審員12人全員が同時に外に出て、決められた時間に戻ってきて、同時に入室する。裁判中は、陪審員12人の世話をする係の人が一人ずっと付いてくれて、いろんな質問に答えてくれたりサポートしてくれたりする。
陪審員にはわずかだが日当が支給される。おそらく全国一律で決まっていると思うけれど 、今回は半日につき31ドルプラス 交通費が支給された。結局月曜日から金曜日まで5日間の裁判だったので 、後日300ドル程度が指定した口座に振り込まれていた。
陪審員として働いている時間の長さ、プレッシャーとストレス、そして責任の重さを考えると、金額的には決して多いとは言えない。毎日裁判が終わって家に帰ると、もうヘトヘトだった。
裁判の内容については口外ができないのでここでは書けないけれど、一つだけここで書くとすると、やはりニュージーランドはものすごくフェアな国だと実感したことだろうか。
陪審員として5日間働いてみて感じたことなどは、また後日書いてみたいと思う。
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