がんばって!など言えない
12歳から18歳まで、長期の中学高校留学生達がたくさんいる。
今年から留学を始めた人もいるし、留学5年目の人もいる。
彼らと電話や直接会って話をする機会も多いけれど、彼らに向かって「がんばって!」と言ったことはほとんどない。
よく誰にでもすぐに「がんばって!」という人がいる。タイミングが合えば、それはとても効果を発揮する言葉だと思う。
けれど、私は留学生達には、「がんばって!」とは言わない。なぜなら彼らはすでにもうかなりがんばっているからだ。
12歳や15歳で、留学に行こうと決めて、荷造りをして、一人で飛行機に乗ってニュージーランドにやってきて、初めて会う人の家や寮で生活を始める。その上、周囲の人達が話す言葉はほとんどわからず、どこに何があるのかもさっぱり知らず、食べるものは今までとかなり違い、何をどうしていいのかも理解できず、それでも朝が来れば学校に行って授業を受け、休みの日はホストファミリーや寮の友達の言うままについていき、どこにいるのかもわからないまま一緒に時間を過ごす。
何がどうなっているのかわからなくても、聞くこともできず、快適だった日本での生活に戻ることもできず、さみしくて涙が出ても人前で泣くこともできず、この先何が待っているのかもよくわからない。
2年目、3年目などの留学生活でも、自分が設定したゴールになかなか近づけず、やるべきことをやっているのに結果が出ず、周りの人達にも思ったほど認められず、やる気がなくなり、でもやり続けなければならず、それ以上何をどうすればいいのかわからず、いっぱいいっぱいの状態になることもある。
そんな状態に置かれるのが留学生活だ。
それを、12歳や15歳、18歳の中学生、高校生がやっているのだ。
彼らは必死にがんばっている。もうこれ以上がんばれないくらいがんばっている。
そんな人達に気軽に「がんばって!」などと言えるわけがないだろう。
私達が彼らに言えるのは、何が何だか訳がわからず、言葉も通じず、文化も理解できず、孤独を感じて、泣きたくなるような、そんな状態は、それほど長くは続かないことを伝えることだ。
そして、周囲には必ず理解してくれる人がいて、英語でのコミュニケーションもできるようになってくるし、生活にも慣れ、自分がやりたいことができる日も来て、毎日の生活がものすごく楽しくなる、ということをわかってもらうことだ。
留学生活が長い人には、こつこつやっていると必ずチャンスは来るし、きちんとやっていることを見ている人は必ずいるし、やるべきことがわからなければ相談に乗ってくれる人もいるし、余裕が出てくる日も必ず来るし、ゴールが見えてくることも絶対にある、ということを伝えることだ。
今日も彼らは、それぞれの留学生活を送っている。心から応援したいと思う。
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