NZと日本、教え方の違い
先日、日本のジュニアラグビーのコーチをしていらっしゃる方から、ご質問をいただいた。
日本では、子ども達がラグビーの試合や練習をしている時、周囲にいるコーチや親、そしてプレーをしている子ども達自身もいろんな言葉を掛け合う。例えば、一人の選手がボールをパスされたときは、「まっすぐ前へ!」「行け!止まるな!」とか、タックルの場面では、「低く頭を下げて!」「下向くな!」とか、その他の場面では、「早くまわせ!」「右に振れ!」とかだ。そしてニュージーランドではそういった場面でどのような言葉をかけているのか、英語での表現を教えてください、というご質問だった。
ニュージーランドでラグビー留学をしている学生達に聞いてみた。
ラグビー留学生達がまず言ったのは、基本的にニュージーランドでは日本ほど、練習や試合中に周囲のコーチや大人がプレーヤーにいろいろと言わない、ということだ。確かに、練習のときは細かい指摘や指導もされるし、試合中はプレーヤー同士は声を掛け合うけれど、試合をしている時に、コーチや応援している親達が選手に向かっていろいろと細かいことを言うことはほとんどない、と言う。
以前、日本の高校のラグビー部がロトルアの高校に遠征にいらしたときも、練習試合の間日本の高校のコーチたちは選手に向かっていろいろと指示を出していたが、ロトルアの高校のコーチ達はほとんど何も言っていなかった。
さらに、あるラグビー留学生は、「日本でラグビーをやっていたときは、試合中にコーチがいろいろと細かい指示を出すので、選手が失敗を恐れて固くなって、誰もが同じようなプレーをするようになっていた。」「でもニュージーランドに来たら、試合中コーチはほとんど指示を出さないので、選手達はみな自分で考えて自分独自のプレーをして、選手それぞれの持ち味を生かしたプレーをすることができる。」と言っていた。
英語での表現についてご質問をいただいているのに、基本的に細かい指示は出さない、という返答で参考にしていただけるだろうか、と懸念しながら、ラグビー留学生達の言葉をそのまま、ご質問をいただいた日本のジュニアラグビーのコーチにお伝えした。すぐに返信をいただいた。
「いつもありがとうございます。大変参考になりました。野球みたいに和製英語があるのか気になっていたのですが、教え方に違いがあったのですね。コーチ、保護者は私も含めて、試合中にあーしろ、こーしろと指示を出して、うまくできないとだめだとしかることになります。 この違いは大きいでしょうね。身につまされる思いです。子ども達の次の試合では、褒めることと、考えさせることに徹してみたいと思います。」
このジュニアのコーチの方は、小学生の息子さんも日本でラグビープレーヤーとして活躍し、ご自身もコーチとしてチームにかかわり、またニュージーランドのラグビーの試合も現地で観戦されたこともある方だ。だから、日本のジュニアラグビーのことはよくご存知だし、ニュージーランドラグビーのファンでもいらっしゃる。
私もこのジュニアコーチから返事をいただいて、あっそうだったのかと改めて思った。ニュージーランドのやり方が絶対にいいとか、日本のやり方はよくないとか、そんなことではなくて、小学生のラグビーの指導方法は、ニュージーランドと日本では基本的に大きな違いがあるということに、改めて気づかされた。小学生のラグビーの違いは、ジュニアプレーヤー達自身の違いというよりも、教え方に違いがあるのだ。
そしてそれを少し進めて考えていけば、やはり、ラグビーの指導だけではなく、学校の先生や家庭の親の、子どもへの接し方、そしてさらに、社会全体の子どもへの接し方の違いに発展して考えることもできると思う。
日本のジュニアラグビーのコーチのご質問から、いろんなことを考えさせられた。
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