ゼロリスク戦略でいいのか

最近日本では、ゼロリスクを求める若い人たちが増えてきているそうだ。

毎日の生活の中で、あるいは将来の人生設計で、できるだけリスクが少ないことを望む。リスクを避けることを最大の基準にして生きている。

十分理解できる。今の日本で生きていても、必ず明るい未来がやってくると多くの人が確信して生きていくことは難しいだろう。特に2000年以降に生まれた人は、物心ついた時からずっと「失われた〇〇年」が続いていて、バブル経済も高度経済成長も知らず、景気が良い状態を実感せずに大きくなってきた。

その上2020年からは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出もままならず、学校にもいけず、遊びもやりたいこともクラブ活動もできず、友達とも会えず旅行にも行けず、そして収入も減り物価は上がっている。

そんな時代に生きている人が、未来に向かってリスクをとって何かチャレンジしようとは思わないだろう。

もしかするとこれからもっと状況が悪くなるかもしれない、悪くはならないとしてもこれ以上いい状態にはならないかもしれない、と予想せざるを得ないのなら、それ自体がリスクだと考えて、もうこれ以上のリスクは勘弁してくださいと思うだろう。

でもだからと言って、ゼロリスク戦略が全ての人にとって合理的な選択かというと、そうでもないと思う。

一つは、日本と世界の状況は少し異なるからだ。

先日日本のテレビ番組で、米国やオーストラリアで働いている人が、年収1000万円だとか、ワーホリで稼いでかなりの額の貯金をしている、などと報道されていた。もちろんテレビ番組としてある程度は誇張やバイアスがかかった内容になっているだろうけれど、日本とその他の国で状況が大きく違うことは明らかだ。

もちろん日本以外の国に行けばそこはすべてパラダイスかといえば、そんなことは全くない。米国でもオーストラリアでもニュージーランドでも、日本とはまた別の問題を抱えている。

でも、日本よりは、これからもっと状況が悪くなるかもしれないと考えている人の割合は、これらの国では少ないように思う。今は状況は悪いかもしれないけれど将来には少しは期待が持てる、そんなふうに考えている人も多いと思う。

だから、日本を出て海外に行けば、ゼロリスク戦略を取り続ける必要はなくなる可能性もあるのだ。

もう一つは、日本でももしかすると状況が変わるかもしれないからだ。

バブル経済真っ盛りの頃は、そのまま日本は永遠に好景気が続くと漠然と考えていた人も多かった。でも大方の予想に反してバブルは弾けた。

だったら、もっと状況は悪くなるかもしれないと漠然と考えている今の状況から、何らかの明るい変化が出てくる可能性もあるだろう。

だから、状況をよくみて準備をしていれば、その変化に乗れることもあるかもしれない。

日本を抜け出して海外に移るにしても、日本の状況が変わるのを待つにしても、ゼロリスク戦略のままでは対応できない。

自分が移動したり、時間の変化があるときには、戦略も変えるのは当然だ。

だから、将来ずっと今の状況が続くことを当たり前の前提とせずに、何かの変化が起こった時に、それにしっかりと対応できるような戦略を考え、準備し、そして時が来た時には確実に実行できるようにしておくことが大切なのではないか。

キックオフNZのSNS