試合に出るか出ないかは選手が決める
ニュージーランドはラグビー王国だ。
5歳くらいから各ジュニアクラブチームに所属する。そして、高校生になると高校のラグビー部に入る。強豪校高校では、U13、U14、U15、U16などの年齢別チームがあり、U18にも1st XV(一軍)から多いところで7軍8軍くらいまでチームが編成される。どのチームも大会に参加できるので、シーズン中は、ラグビー部に入ればすべての選手が試合に出られるチャンスがある。
一つの試合に登録できるのは22名だ。各試合の前に、そのチームや一つ上か一つ下のチームに所属する25名~30名程度の候補の中から登録選手が選ばれる。
先日、ラグビー強豪高校の1st XV(一軍)のコーチが、週末の試合に出場登録する22名の選手を選んでいた。対戦相手によって、また、それまでや今後の試合スケジュールによって、登録選手が決められる。
私がコーチに「週末の試合はA君はでるの?」と聞いた。A君は3週間ほど前に怪我をしてしばらく試合に出ていなかったけれど、医者からはもう出場してもいいと言われていた。
私の質問に、「コーチ陣としては彼に出場してほしかったので、彼に出場するかどうか聞いた。」とコーチは前置きした後、「彼自身が怪我の後でフルで出場する自信がまだないと言ったので、今週末の試合には出さないことにした。」と言った。
コーチ陣はその選手を週末の試合に出場させようと考えていた。でも、怪我をした後の最初の試合だったので、コーチは選手自身に出るかどうかを確認した。そしてその選手は、まだ自信がないという理由で出場しないとコーチに伝え、コーチは選手の意思を尊重して出さないことにした。
つまり、強豪高校の1st XV(一軍)の試合とはいえ、出場するかどうかは最終的には選手が決めたのだ。
考えてみれば、怪我をした後、試合に出て100%のパフォーマンスが出せるかどうかもっともよくわかるのは、おそらく選手自身だろう。
医者が出てもいいと言うのは医者としての視点から言っているだけで、試合でフルのパフォーマンスが出せると言っているのではない。
コーチは練習の様子などを見て出場できるかどうか考えるけれど、どんな動きをした時に痛みがあるのか、どんなプレーでも100%の力を出せるのかまでは、わからない。
だからコーチは選手に聞く。「コーチ陣としては君に出てほしい。でも、君は今度の試合に出られるのか?」と。
そして選手が出られますと言えば出す。出られませんと言えば出さない。あくまでも、選手が最終決定する。
コーチは、「それは彼の判断だから」と何度も言っていた。その言葉には、選手の意思を尊重し、選手をできるだけ守ろうとする気持ちを強く感じた。
こうやって、たとえ高校生であっても、自分の状況をよく考えて、自分で判断して、自分で行動し、それをきちんと周りにも伝えて、その結果も自分で引き受ける、という態度を身に付けていくのだ。
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