自分のことは他人が決める
留学生がニュージーランドに到着して留学生活をスタートさせる時、様々な場面でID(身分証明)の提示が求められる。
例えば、入国する時には必ずパスポートの提示が求められ、写真と顔を照合される。めがねをかけていたり、帽子をかぶっていたりしたら、「取ってください」と入国管理の人に言われることもある。
また、現地の銀行口座を開設する時にも、パスポートの提示が求められるし、図書館で貸し出しカードを作るときにも、レンタルビデオショップで会員になる時にも、ニュージーランドでお酒を買うときにも、IDの提示を求められる。そんなときのIDは、パスポートでももちろんいいけれど、学生証や運転免許証なんかでも認められたりもする。
パスポート、学生証、運転免許証などのID。その人がその人であることを証明する書類。例えばパスポートには、写真、名前、生年月日、性別、国籍、本籍地などが記載されていて、本人がサインをしている。ニュージーランドの運転免許証にも、写真、名前、生年月日、そして本人のサインがある。
つまり最低限、写真、名前、生年月日、サインの全てが一致すれば、その人はその人と認められるということだ。
普段あたりまえのようにパスポートを大事に抱えて入国審査を通るけれど、基本的にそれらの個人情報が一致することだけで、本人であることを確認しているに過ぎない。文字にして並べてみると、かなり簡単で、確認すべき項目が少なすぎるようにも感じる。
さらにまた、パスポート、学生証、運転免許証などの、ID(身分証明)は、100%必ず他人が作る。自分で作ったパスポートや学生証、運転免許証は、IDとしては絶対に通用しないし、それどころか、偽造したということで捕まる可能性もある。
そう考えると、自分が自分であることを証明する書類は、必ず他人が作っている、しかもその他人には会ったことも話をしたこともない、というのは、かなりおかしくて不思議だ。言い換えれば、会ったこともない人が作った書類が、自分が自分であることを確実に証明する書類として、世界中で通用しているということだ。しかも本人を特定する情報は、写真、名前、生年月日、そしてサインだけだ。
考えてみると変だし、何か危うい感じもする。
では、自分が自分であることを他人に証明するには、他にどんな方法があるだろうかと考えると、やはり必ず自分でない人=他人が証明する他はない。そして何をもってその人と証明するのかも、今の項目くらいしか妥当なものはないだろう。
自分が自分であることは、限られた情報を元に必ず他人が証明する。そんな自分は一体何者なのだろう、と、「IDを見せてください」と無表情で求めてくる人達を見て考えた。
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