英語に触れる機会の質を高める環境
英語は習うより慣れろ、とよく言われる。
人に教えてもらうのもいいけれど、それだけではなくて、教えてもらったことを使う機会を増やせ、ということだろうと思う。では、語学学校などで英語を勉強して、そこで学んだ文法や単語、言い回しを、聞いたり話したり、読んだり書いたりする機会をどうすれば増やせるのかが問題だ。また、機会を増やすだけでいいのか、どんな機会でもいいのか、というのも考える必要がある。英語に触れる「量」と「質」の問題だ。
英語に触れる量=時間を増やそうと思えば、周りの人々が使う言葉や、書物、メディアなどが全て英語の環境に身をおくのが最も効率がいい。それは、日本から出て、ニュージーランドなどに場所を移動するということで得られる環境だ。言い換えれば、旅行する、あるいは留学する、仕事するということだ。
でも、同じように英語を勉強して、同じように旅行したり留学したりしている人のなかでも、英語の上達の度合いが違うことがよくある。その人の持っている能力もあるにはあるだろうが、同じ時間=量だけ英語に触れていても上達に差があるのは、やはり英語に触れる機会の「質」が違うのだと思う。
英語に触れる機会の質の違いというのは、私が考えるには、どれだけ英語を必要としているかの程度の違いと言えると思う。
「語学学校で英語を勉強した後、ニュージーランドの北島と南島を3ヶ月間一人で旅行(最近はラウンドというらしいが)しました。」これでも、英語に触れる機会は十分にある。一人でニュージーランドを旅行していると、宿やトランスポートのブッキングも自分で英語でやらなければならないし、バックパッカーズホステル(バッパー)では出会った人と英語で会話もするだろう。日本にいるよりははるかに英語に触れる機会は多いし、どうしても英語を話さなければならないこともたくさんある。でも、旅の間に日本語の本も読めるし、英語を話したくない時は、自室にこもっていたり一人で散策していればいい。旅の間、英語をどうしても使わなければならないという環境を自分の意思で避けることも可能だ。
「語学学校で英語を勉強した後、ニュージーランドの企業でニュージーランドの人々と一緒に半年間働きました。」この場合も、一人旅をするのと同様に、英語に触れる機会は十分ある。しかも、仕事で1日8時間以上は英語だけの環境であるならば、嫌な時でも、うまく英語で表現できないことでも、何とか英語を使ってコミュニケーションをとらなければならない。英語を避けたいと思っても、避けられないことも多い。一人旅の場合よりも、どれだけ英語を必要としているかの程度が大きいと言えるかもしれない。ただ、仕事を離れれば、日本語の環境に身をおくこともできるし、家では日本語のビデオを見る時間も十分にあるだろう。仕事時間以外は、英語をどうしても使わなければならないという環境を自分の意思で避けることもできるだろう。
「語学学校で英語を勉強した後、ニュージーランドの専門学校に1年間通って、ディプロマの資格を取りました。」この場合はどうだろう。仕事をしている場合と同様、授業中はずっと英語だ。先生に質問するのも英語だし、教科書も英語だ。オフィスの人も英語を使わないとコミュニケーションをとることができない場合が多いし、友達とも英語での会話が多いだろう。そして、専門学校やポリテクでは、家に帰ってからも勉強しなければならない。時には、英語の教科書や資料を1週間で数百ページ以上読まなければならないこともあるし、インターネットで情報を探すのも、英語を使うことが多いだろう。授業時間プラス家での勉強時間も嫌でも英語に触れなければ、単位も取れないし、卒業もできない。ただ、勉強以外の時間は、英語をどうしても使わなければならないという環境を自分の意思で避けることができる。
これらの例は単純化、一般化したもので誰にでも当てはまるものではないし、どれがいいとか悪いとかの問題ではない。ただ、英語に触れる機会の質という観点からすると、英語をどうしても使わなければならないという環境を自分の意思で避けることができない、という状況に身をおくことで、その質を高めることもできるのではないか、ということだ。英語は習うより慣れろ、というのは、単に英語に触れる時間を増やすというだけではなく、どうしても英語を使わなければならない環境に身をおくことで、英語の上達が期待できる、ということなのだと思う。
全ての人に専門学校やポリテクへの留学を勧めているのでもないし、一人旅は英語力が伸びないといっているのでもない。英語に触れる機会の質を高める環境は、人それぞれで違うと思うし、それだけで英語力が伸びるとも思わない。ただ、もし可能であるならば、もし英語力を伸ばしたいと強く思っているならば、自分にあった方法で、英語に触れる時間だけではなく、英語に触れる機会の質を高める環境を手に入れるのがいいのではないかと思う。
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