フランスの選手を襲ったラグビーファンは存在しなかった
6月20日にウエリントンで行なわれた、オールブラックス対フランスの試合の後、フランスの選手がウエリントンで暴漢に襲われて負傷するという事件があったと報じられた。
このニュースは、2011年にラグビーワールドカップを自国で開催するニュージーランドにとって、大きなネガティブなニュースだったし、ニュージーランドのラグビーファンの評判を世界的に落とすニュースでもあった。
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しかし、今朝になって、暴漢に襲われたという事実はなかったと、フランスのラグビーユニオンが発表した。事実は、お酒を飲みすぎた選手が、ホテルに戻って自分の部屋で転んで、机で顔を打って怪我をしたということだった。その20歳の選手は、コーチ陣に自己管理能力を問われることを恐れて、パニックになって暴漢に襲われたとうそをついたということだ。
うそをつくことは悪いことだ。しかも、他人や他国、他のチームや他の団体を大きく巻き込んでしまうようなうそは、許されるものではない。多くの人がショックを受け、多くの人が迷惑した。
しかしながら、弱冠20歳の選手が、フランスの代表としてホームを離れて戦う精神的重圧は、かなりのものだっただろうと思う。20歳といえば、日本ではまだ大学2年生だ。その歳で、国の代表として外国で戦い、その成績によって収入や評判が左右される。プレーはライブでフランスにもテレビ放映され、何百万人という人が観戦する。試合中失敗しなくても活躍しなかったということだけで評価が下がり、それが収入に直結する。試合に出ていないたくさんの選手が自分のポジションを狙っている。一試合一試合が真剣勝負だ。
体が資本のラグビープレーヤーにとって、健康の自己管理は最も重要な課題だ。酔って自分で転んだという事実に、20歳の若者がパニックになることも容易に想像できる。だからといって、人に襲われたとうそを言ってもいいことにはならない。ただ、あまりにもそのうそがいい加減過ぎることも、その選手の若さを表してるとも思う。そんなうそは、「宿題はやりましたが家に忘れてきました。」といううそと同じレベルのうそだ。すぐにばれることは誰にでもわかる。でも、そんなうそをつかざるを得なかった彼の立場や重圧にどうしても目がいってしまう。
フランスの選手を襲ったウエリントンのラグビーファンは存在しなかった。それが明らかになったのは、ニュージーランドのラグビーファンとしてすごくよかったと思う。そして、その20歳のフランスの選手も、精神的な重圧に負けずにこれからもいいプレーを見せて欲しいと思う。
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