ニュージーランド現地無料留学エージェント

13年前、日本で8年間務めた仕事を辞めてニュージーランド来て、仕事を探しながら夫婦二人でニュージーランドを3ヶ月間ほど旅をした。

オークランドから始まって、ロトルア、ネイピア、パーマストンノース、ウエリントンと滞在しながら南に下り、フェリーに乗って南島に渡った。南島で最初に滞在したのは、ネルソンという街だった。

日本にいた頃に親しくしていたオーストラリア人から、一度日本でニュージーランド出身の人を紹介してもらった。そのニュージーランド人の出身地がネルソンだった。当時はまだ彼のお母さんが一人でネルソンで暮らしていたので、教えてもらった住所を頼りにその方を訪ねてみた。知り合いのお母さんと言っても、日本で友達から紹介されて一度だけ会ったニュージーランド人の、お母さんだ。彼本人のことも詳しくは知らなかった。でも、ネルソンの実家の住所を教えてもらい、お母さんがいるので訪ねてみればいいと言われていたので、行ってみた。

雨の日だった。初めて訪れる知り合いのお母さんのお宅は、こじんまりとしたきれいなお宅だった。玄関をノックしたら、小柄な品のいい70歳くらいの女性がドアを開けてくれた。私たちが名前を名乗り日本から来たのですと、つたない英語で言うと、伝わったのか伝わっていないのか、にっこりと笑顔で家の中に招いてくれた。通されたのはダイニングルームだった。キッチンと一緒になっているダイニングルームには、一人暮らしに適当な小さなテーブルが置いてあった。私たちはそこに座って、彼女が紅茶をいれてくれるのを少し緊張しながら待っていた。

彼女が3人分の紅茶を運んできてくれて、それぞれの前に置き、ゆっくりと私たちの前に座った。そして、開口一番、こう言った。

「ところで、あなた達はどちら様でしょうか?」

しばらく何のことかわからなかった。彼女の質問の意味を考えた。そして、どう考えても、日本で知り合ったニュージーランド人が、私たちのことをお母さんに伝えていなかったとしか考えられないことに気がついた。

でも、私たちはすでにその一人暮らしの女性のダイニングルームで、彼女がいれてくれた紅茶を前に座っていた。どういうことだろう。すでに玄関をノックしてから10分以上が経っていた。

見知らぬもの同士、小さなダイニングテーブルを囲んでしばらく無言で向かい合っていた。

それから何をどう説明したのかはよく覚えていない。でも、彼女の息子さんの名前を口にしたときにやっと、ああっそうか、という表情をしてくれたのははっきりと覚えている。きっと息子の日本での友達なのだ、と思ってくれたのだろう。

もし私たちが強盗でもしようと思ったら彼女はどうしたのだろう、と後になって考えることがある。よく、見も知らない日本から来た夫婦を家に入れてくれたものだ。

紅茶をいただいた後、雨の中その方は有名なスプリングスを案内してくれた。きれいな緑色のスプリングスに雨が落ちていた風景を今でも覚えている。

13年前のネルソンでの一つの出会いの話だ。