留学は破壊と再構築だ
留学は「破壊と再構築」だと思う。
先日ツイッターを眺めていたら、経営コンサルタントの大前研一氏の言葉が目に留まった。それは、「人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える。2番目は住む場所を変える。3番目はつきあう人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。」というツイートだ。確かに、環境の変化なしに自分自身を変えるのは難しい。人間が変わるのは、時間、場所、人という外的要因が変わるとき、つまり、人間を規定しているのは、時間や場所や人という周囲の要素だ、ということだろう。
海外留学は、この「時間、場所、人」の3つの要素を一気に変える出来事だ。しかも、その変化は大きい。だから、海外留学をするということは、人が変わるチャンスを得る、ということだ。
留学をすると、当然、住む場所が変わる。また今までに出会わなかった人と出会う。そして、新しい学校に通うことで、生活の時間も大きく変化する。だから、いやおうなしに人は、変化への圧力を外側から受けることになる。
でも、留学をすれば、つまり、時間と場所と人が変われば直ちに人間が変わるかと言えば、決してそうではない。今までに多くの留学生を見てきたが、留学をしてどんどん変化していく学生とそうでない学生がいる。大雑把に言えば、留学をしてどんどん変化していく学生は、時間や場所や人といった周囲の変化を、積極的に認識して受け入れている。逆に、留学してもあまり変わらない学生は、周囲の変化に抗うように生活をしようとしている。
例えば、寮で生活をしている高校留学生は、起床から消灯まできちんとした時間割が決められているが、そのルールにを積極的に受け入れてそれに自分を合わそうとしている。寮生活なので、自分の都合で毎朝寝坊をしたり、夕食の時間に遅れたりはできない。そして寮のルールに従うことで、生活の時間が日本にいたときと大きく変わる。この時間の変化によって、寮で留学生活を送っている学生自身が変化するのだ。
でも、大きな街のホームステイに滞在している語学留学生の中には、例えば、今日は放課後友達と遊ぶので夕食はいらないとか、部屋で夜遅くまでインターネットをしているとか、日本にいたときと同じような時間の使い方をしている学生もいるようだ。そういう留学生は、せっかく留学しているにもかかわらず、日本にいたときと同じような時間の使い方をして、その結果、留学生自身も大きな変化をしない。成長も変化の一形態だとすると、成長もしない、ということだ。
また例えば、日本からの留学生が少ない高校で留学している学生は、今までに出会ったことのない、ニュージーランドの学生や他国からの留学生達と、嫌でも付き合っていかなければならない。私も留学生達には、英語力を伸ばすためにできるだけ現地の学生と友達になりなさい、という指導をするが、変化という観点から言っても、日本では出会わないような人達とつきあう、ということは大切なことだろう。そして、現地の学生とどんどん積極的に友達になる高校留学生達は、彼等自身もどんどん変化する。
一方、語学学校でついつい日本から来た留学生達と放課後遊んでしまうといった留学生達は、せっかく留学に来ても、日本にいたときと同じような人と付き合うことになる。つまり、人間を変える3つの要素のうち「人」が変わらない、ということだ。だから、そういう留学生はその人自身がなかなか変化しない。
そもそも何のために留学に来るのか、という目的にもよるのかもしれない。でも私は、留学は破壊と再構築だと思う。留学の醍醐味は、と言ってもいいかもしれない。日本にいたときの自分の生活、考え方、性格、感じ方などを、一旦壊し、そして、日本と違う場所で違う人と出会い、違う時間の過ごし方をして、最初から自分をもう一度作り上げていく、そういう過程が留学だと思うし、大きな時間とお金をかけて海外に来る限りは、この破壊と再構築を一度経験して、日本に帰国してほしいと思っている。
もちろん、一旦破壊をしてから、また日本にいたときと同じような考え方をし続け、感じ方も同じであってもかまわない。極端な話、ぱっと見たときに変化がなくてもかまわないと思う。
留学にきて、時間と場所と人が変わり、それらの力で今までの自分が変化する、つまり破壊されるときは、誰でもとても怖い。なぜなら、今まで自分が拠ってきた自分自身が無くなってしまうからだ。でも、その変化、破壊を経験して、その後自分で自分自身を再構築していく過程で、人間は大きく成長するのだと思う。また、再構築した結果、日本にいたときとほとんど変わらなくても、自分自身を破壊する恐怖を味わうのはとてもいい経験だ。
留学をきっかけに、自分自身を成長させよう、自分自身を変えようと思っているのならば、「時間、場所、人」の3つの変化を積極的に受け入れて、自分を変化させ、そして自分を壊し、そこから新たな自分を再構築させていくのがいい。
ちなみに、大前氏の人間が変わる方法についてのツイートには続きがあって、そこには、「最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ」と書かれてある。
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