自分で考えるという態度
ニュージーランドに留学に来る人達は皆、大きな期待を胸にやってくる。そして、留学中こんなことをしようとか、留学を終えるときにはこんなふうになっていたい、とか、様々な計画、目標も持ってくる。
それはとても大切なことだ。そして、弊社を通して留学に来る人達には、私はもう一つ、留学中にやってほしいことがある。それは、「自分で考える」という経験をして、できればそれを身につけて日本に帰国してほしいということだ。
今まで私は、自分で考えるという話をするときに、「自分で考える力をつける」という言い方をしていた。留学して自分で考える力をつけてほしい、などだ。でも、よく考えてみると、自分で考えるというのは、「力」と言うよりも「態度」だろうと最近感じる。特に、15歳で日本から来た高校留学生に、3年間の高校留学で自分で考える力をつけてください、と言っても、かなりわかりにくいだろうし、その力をつけるためにはどうすればいいのか、ということになる。でも、「自分で考える態度」であれば、比較的理解しやすいし、留学を始めたときから具体的にそれを実践しようとすることも可能だろう。
だから私が、留学に来る人や留学中の人に伝えたいのは、留学中の様々な経験を通して、「自分で考える態度」をまず身につけてほしい、ということだ。具体的に言えば、あらゆることに対して、まず自分で考えてみることを実践してほしい。
先日クライストチャーチに行って、高校のラグビー部のコーチと話をした時、彼もこう言っていた。
「日本から留学に来た学生は、ラグビーのスキルは高い人もいる。言われたことを忠実に実践する能力は、ひょっとしたらニュージーランド人よりも日本からの留学生のほうが優れているかもしれない。でも日本からの留学生に決定的に欠けているのは、考えて動く、ということだ。言われたことはできるけれど、試合でその場その場の状況に応じて考えて動くことができる人は、なかなかいない。」
ラグビー留学生の一人も「ニュージーランドに留学に来て学んだことは、練習中や試合中のコミュニケーションの大切さと、敵を見て自分で判断して動く、ということ。何のためにその練習をするのかを毎回必ず説明してくれるので、自分で考えながら練習ができる。日本だと、ひたすらパスを何百回もする、など何も考えずにできる練習もするので、そこがニュージーランドと日本との違いだ。」と言っていた。
「自分で考える態度」を身につけてほしいのは、スポーツ留学生や高校留学生に限らない。語学留学生も、ワーホリの人も、ポリテクや大学に通う人も、いろんな状況で、まずは自分で考えてみることを実践してほしいし、ニュージーランドでならそれができると思う。
日本からニュージーランドに到着した留学生に、私がまず「留学の目的は何ですか」などと質問するのは、自分で考える態度を身につけてほしいという意味もあるし、「あなたはどうしたいのですか」とか「あなたはどう思いますか」とことあるごとに留学生に聞くのも、自分で考える態度を何とか喚起したいからだ。
そして、これからの日本や世界で生きていく若い人達には、今までの日本の社会のように、「みんなと同じようにやっていれば、そこそこうまく行く」「会社で上司に言われたことをとりあえずこなせば、昇進していく」という態度ではなく、周りの人の言っていることややっていることも参考にしながら、最終的には自分で考えて判断して行動する、という態度が強く求められるのだと思う。そして、そういう態度で臨まないと、社会もそして個人個人もうまく行かない時代になってきているのだと思う。
でも、日本にいるとまだまだ、「何も考えずにパス五百回」という練習が行われているのだろうし、「あなたはどうしたいの」「あなたはどう考えているの」と問われることも少ないだろう。そうして、「自分で考える態度」を身につける機会がないまま、周囲と同じであることに安心して時間が経っていく。
留学に来る目的ややりたいことは様々だ。でも、せっかくニュージーランドに留学に来たのなら、「自分で考える態度」も身につけてほしいし、ニュージーランドにはそれを身につけるための環境が整っていると思う。
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