筆記体

私が中学1年生のとき、学校で初めて英語を習った。田舎の公立の中学だったが、生徒全員が英語専用のノートを買わされた。英語専用のノートには、一行の真ん中あたりに点線と赤い線が引いてあり、アルファベットの大文字と小文字の書き方をそれで習ったように思う。

先生も黒板に英語専用ノートと同じ、点線と赤い線が真ん中に入った行を書いて、「A」や「a」を「エィ」とみんなで発音しながら、丁寧に一文字ずつ書いていった。先生は、「エー、じゃなくて、エィですよ。」などと生徒に注意をして、私もみんなと声をそろえて「エィ」「エィ」と何度も言いながら、何故私は教室でみんなと一緒に「エィ」と言っているのだろう、などと考えていた。

ニュージーランドに来て、英語を書く機会が増えた。私が書いたアルファベットを見てニュージーランドの人は、「読みやすい字を書くね」と驚く。日本人の書く英語はニュージーランドの人達にとっては、かなり読みやすいようだ。

日本の中学一年で一通りアルファベットの書き方を習った後、今度は筆記体を習った。ブロック体とは異なる書き方に最初は戸惑ったように思うが、段々うまく書けるようになった。そして中学3年生くらいになると、学校の英語のテストは全て筆記体で書きなさい、と先生から言われた。

ニュージーランドで暮らして15年。普段筆記体を書くニュージーランド人を今まで一人しか見たことがない。銀行員も、弁護士も、会計士も、ショップのスタッフも、学校の先生も、英語の先生さえも、みんな独特のブロック体のアルファベットを書く。だから私も、手書きで書類を書くときには、筆記体ではなくブロック体で書くようにしている。そのほうが、ニュージーランドの人達には読みやすいようだ。

今、日本の中学校では、筆記体を教えているのだろうか。筆記体を書けるに越したことはないと思うが、そもそもアルファベットを手書きで書くことも、試験以外はほとんどないだろうし、ニュージーランドで使っている人もほとんどいない。

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