留学とインターネット
インターネットが普及して誰もが当たり前のようにそれを使い、パソコンやスマートフォンでサイトをチェックしたりメールを送ったり友達と連絡を取ったりすることが、安く気軽にできるようになった。
それに伴って、おそらく日本やニュージーランドの風景も変わってきている。15年位前に、まだ主な機能が通話だけの携帯電話が普及したときには、街中や公共の乗り物の中で大声で電話をしている人がいた。それまでの時代にはそんな人はいなかったので、携帯電話に向かって大声で話す人を見て世間は驚いた。
職場や学校にインターネットが入ってきたときにはまだ、ダイアルアップでつないでいた。インターネットに接続するたびに「ピー」という音がして、写真はおろか、背景に画像を入れたサイトでさえ、読み込むのに時間がかかっていた。人々はパソコン画面の前でじっとページが表示されるのを待っていた。
そんな時代にはまだ高校生が携帯電話を持つということも一般的ではなかったし、大人でさえEmail アドレスを持っている人も極端に少なかった。もちろん、動画を見ることも、ソーシャルネットワークでチャットをすることも、スカイプでビデオ会話をすることも、想像すらしていなかった。
2012年。高校生でもパソコンは普通に持っているし、スマートフォンを使っている人も多い。そして、ニュージーランドに来る高校留学生達も、日本からパソコンを持ってきて、携帯電話も日常使っている。
その変化に伴って、留学生の生活も大きく変化した、あるいは変化しつつあるように思う。
インターネットや携帯電話が普及する前、留学生達は一度ニュージーランドにやってきたら、そう簡単には日本の家族や友達と連絡を取ることができなかった。逆に言えば、目の前にいるホストファミリーや学校の友達とずっと向き合っていなければならかなったし、自分の部屋にいても外とつながることができなかったので、部屋にいる時間は自分自身と向き合う時間だった。
でも今は違う。特にここ1~2年は大きく変化した。高校留学生が日本からパソコンを持ってきて自分の部屋で使い、インターネットに接続して、Email やフェイスブックやスカイプで、日本の友達や家族と頻繁に、いつでも、気軽に連絡を取る。それ自体は悪いことではないし、パソコンや携帯電話があれば、それを使ってしまうのは仕方がないことなのかもしれない。
でも、パソコンや携帯で、いつでも気軽に日本の友達や家族と連絡が取れる状態というは、留学生達にとってプラスになるのだろうか、といつも思う。それらがなかった頃のように、目の前にいるホストファミリーや学校の友達とずっと向き合い、部屋で一人で自分自身と向き合う、という経験ができなくなってきているからだ。特に留学のスタート時期は、英語力向上のためにも、以降の留学生活をスムーズに行うためにも、目の前にいる人達と向き合い、自分自身と向き合う時間が絶対に必要だ。それをせずに、日本の友達といつも連絡を取っていると、いつまでたっても本当の意味での現地での留学生活をスタートさせることができないように思う。
でも時代は変わってきている。パソコンや携帯電話を持たないようにとか、使わないようにとか、留学生に言うことはできるが、彼等がそれを実行することはなかなか難しいだろうし、もし私が彼等の立場だったら、つい使ってしまうだろう。
ただ、そうであるならばせめて、目の前にいるホストファミリーや学校の友達とずっと向き合うことの重要性、部屋で一人で自分自身と向き合うことの大切さを留学生達が認識して、できるだけそういう時間を自分で作るようにしてほしいと思う。せっかくニュージーランドに留学に来たのだから、留学中にニュージーランドでしかできない経験をたくさんしてほしいと強く願っている。
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