不便って、なかなかいいと思う
不便だ。
ロトルアで暮らして13年目。バスが平日は30分に1本、土日は1時間に1本なのも不便だ。冬は薪を買ってきて、毎日暖炉に火をつけるのも不便だ。コンビニエンスストアがないのも不便だ。日曜日は多くの店が閉まっているのも不便だ。スーパーマーケットのレジで買った商品を一つずつコンベアに乗せていくのも不便だ。駅どころか電車もないのも不便だ。日本の本が手に入らないのも不便だ。車のタイヤの空気を自分で入れるのも不便だ。とにかく英語でコミュニケーションをとらなければらないのが不便だ。
でも、ここの生活はすごく気に入っている。
バスが来なければ待てばいい。待っている間に新しい発想が生まれるかもしれない。目に留まらなかった雑草が美しいことに気づくかもしれない。
暖炉の火を見ていると1日の疲れが癒される。木をもやして暖まるほうがガスや電気で暖まるよりもより自然に近いと思う。
夜コンビニで雑誌を立ち読みする代わりに、ゆっくりと家で本を読んだり、家族と話したり、ありあわせのものでおつまみを作ったりできる。コンビにがなくても十分生きていける。
日曜日は天気がいいと湖や海や山や森に出かけるのがいい。家でガーデニングをしてもいいし、アクティビティに出かけてもいい。日曜日の午後くらいショッピングをしなくてもかまわない。
スーパーのレジで商品を取り出しながらレジの人と軽く話をするのもいい。人と人とが接しているのだから、そこに挨拶や会話があるのが自然だろう。一言でも誰かと笑顔で会話をすると、疲れがとれる。
電車がなければバスや車に乗ればいい。近ければ歩いてもいい。
日本語の本は貴重だ。貴重だからこそゆっくりと大切に読む。読む本がなくなれば何度でも同じ本を読む。買うときも慎重に選ぶ。本の大切さ、本が読めるありがたさを再確認できる。
車のタイヤに自分で空気を入れることは、自分の車を自分でチェックするということだ。自分の持ち物は自分で大切にメンテナンスする。車だけでなく、他のものも大切に使うようになる。
英語はコミュニケーションのツールだ。大切なツールであるとも言えるし、ツールに過ぎないとも言える。世界には自分の知らない言葉を話している人たちがいるし、知らない文化で生きている人もいる、ということが実感としてわかる。英語力が伸びずに、情けない思いをしたり、恥をかいたり、うまく行かなかったりする経験は、人生の中でとても大切なことだと思う。不自由な環境でも前を向いて進んでいくことの、困難さと楽しさを感じることができる。
不便って、なかなかいいと思う。
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