暇でいいのだ
2週間のスクールホリデー、冬休みも日曜日で終わり、来週月曜日から第三学期が始まる。高校留学生達もまた月曜日から学校だ。短期留学生達は、いよいよ留学が始まる。
この2週間、長期の留学生達もそれぞれいろんなことをしたと思う。中には、ニュージーランドの友達のお宅に泊まりに行っていろんな経験をして、冬休みを楽しみつくした学生もいるようだ。でも、留学生の中には、「暇だー」と時間を持て余している学生も多い。
以前にもこのブログで書いたけれど、私は留学生達が「暇だ」と言うのは決して悪いことではないと思う。
高校留学生の親御さんの中には、「うちの子が暇だと言っているので、何かすることを考えて与えてあげてください」とおっしゃる方もいる。そのお気持ちはよくわかる。せっかくニュージーランドまで留学に行って、どんどんいろんな経験をしてほしいと願っているのに、「暇だー」と言われるとがっくりくるし、時間がもったいないと感じてしまう。ならば、留学生の周りにいる誰かに「何かすることを与えてください」と求めるのは当然の親心だろう。私が同じ立場でもきっと同じことを言う。
でも、「暇だー」と言っている留学生に、こちらがお膳立てをして何かすることを与えることは、彼ら、彼女らにとっていいことなのだろうか、といつも思う。それが続くと、「暇だ、と言えば、周囲の誰かが何かすることを考えて与えてくれる」と留学生達が思ってしまうかもしれない。そして最後には、「僕が、私が、暇だと言っているのに、誰も何もしてくれない。」と「誰かが何かをしてくれて当たり前」という態度になってしまう。
キックオフNZ の留学生達が「暇だー」と言うと、私は「暇だろうと思う。ロトルアはすることがあんまりないからね。」とだけ言う。実際、ロトルアは都会ではないので、高校生が街に出てエキサイティングな出来事に出会うということは、ほとんどない。車などの移動手段とお金があれば、いろんなアクティビティや観光も楽しめるだろうけれど、徒歩と自転車とバスしか移動手段のない彼ら、彼女らの行動範囲は限られている。
でも、長期で留学している、あるいはしていた留学生達を見ていると、最初は「暇だー」と言っていたのが、段々と自分で何かすることを見つけてやり始める人が多い。日本では本など読まなかったのに親御さんに「本を送って」とメールをするようになった学生もいるし、日本ではキッチンなど入ったことがなかったのに、ステイ先で料理を作るようになったり、日本では言われないとやらなかったラグビーのトレーニングを自分からやり始めたり、引っ込み思案だった学生が友達を誘って遊びに行くようになったり、ニュージーランドでしかできないアクティビティを始めたり、ホストファミリーと会話をするようになったり、英語で字幕なしで映画を見るようになったり、勉強するようになったり。それぞれの留学生が、自分でやることを考えて、自分で行動するようになる。
もちろん中には何もしないまま時間だけが過ぎ去っていく留学生もいる。でも、彼ら、彼女らは自分自身で「やばい、もう1年の半分が過ぎてしまった。」などと危機感を感じているのだと思う。そういう、時間はあっという間に過ぎてしまう、という危機感を実感することも大切なことだと思う。そしていつか必ず、自分で考えて、自分の暇な時間に何かをし始めるのだ。
何もすることがない時間が目の前にあるときに、自分でやることを考えて何かをする、という行動力、判断力は、大人になって社会に出たときにも必ず役に立つ。仕事でも当然役に立つし、プライベートな時間にもきっと役に立つ。
だから、暇なときには誰かが何かすることを与えてやるのではなく、暇な時間の中にどっぷりと浸かって、「暇だー、暇だー、誰か何かすることを私に与えてー」と心の中で叫びながら、そして「自分から動かないと、誰も何もしてくれない」ということに気付き、「じゃあ、暇だからこれをやってみよう」と自分で何かを見つけてやり始める。そういう「自分で考えて行動する」という経験を、実感を伴いながらしてほしいと思っている。
(Kickoff-T)
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