178ドルでいいよ!
先日、留学生と一緒に携帯電話を買いに行った。
電器店に行って、ディスプレーされている携帯電話を一緒に眺めていたが、それほど選択肢が多いわけではない。大体同じ価格帯の電話は1種類から2種類で、安いものだと本体のみで50ドル程度からあるし、高いものだと本体のみなら1000ドル以上する。
私もいろいろとアドバイスをして、その留学生もいろいろと考えて、「この携帯電話にしよう」と1つ決めた。その電話は、もともと240ドルくらいするものが、その日からセールで178ドルになっていた。機能も一通りそろっているし、しかもその日からセールで安くなっている、というのが決め手となった。
カウンターに行って、「これがほしい」と言うと、スタッフのおにいさんが「ちょっと待っててね」と言って裏に取りに行ってくれた。しばらくして手ぶらで戻ってきて、「ごめんね、今ストックがないんだ。もしよければ、返品で戻ってきたものならあるけれど。。。または今から発注してもいいけれど、1週間はかかるよ。」と言った。私たちが困った顔をしていると、「隣に電器店があるから、一度見に行ってみるといいよ。そこでも同じ値段で売っているかもしれない。」と言ってくれたので、隣の電器店に行った。そこでは同じ携帯電話が240ドルで売られていた。
どうしようかと思ったが、もう一件携帯電話を売っているところがあるのでそこにも一緒に行ってみた。残念なことに、そこでも同じ携帯電話が240ドルで出ていた。その店のスタッフが「どうしましたか」と話しかけてきたので、「近くの店では同じ携帯電話が178ドルで売っていたけれどストックがなかった。気に入っているのだけれど、240ドルなら買うことができない。」と私が言った。スタッフのおにいさんはしばらく考えてから、店のコンピュータを操作してこう言った。「178ドルでいいよ!」
なんだかよくわからないけれど、言ってみたら安くしてくれた。留学生も喜んでそれを買った。
帰り道、留学生が私に聞いた。「今日からセール、という商品の在庫がない、などということが、よくあるんですか?そんな状態でも誰も怒らないんですか?」私は「それほど特別なことではないと思うし、お客さんもごねる人はまずいないんじゃないかと思う。だって、ないものはごねてもしょうがないし、ごねたからと言って、状況が改善されるわけではないからね。」と言った。
彼の疑問に答えながら、私も考えた。日本なら今日からセールという商品の在庫がない、などということはほとんどないだろうし、もしそんなことがあっても、できるだけ早く取り寄せて、届いたらすぐに連絡します、くらいは言ってくれると思う。間違えても、隣の店で売っているかも、などという応対はしないだろう。でも、ニュージーランドでは、そういう応対が日常的にあるし、お客さんもそれで納得する。
それはやはり、そういうところでみんながバランスを取っているからだと思う。店も100%徹底的に完璧なサービスを提供するわけではないし、お客さんもそれを徹底的に店に求めようとはしない。ニュージーランドはそのポイントで平衡を保っている社会だ。日本は、サービスも徹底しているが、お客さんも完璧なサービスを求める。そこがバランスポイントだ。
どちらがいいということではなくて、バランスのポイントが違うだけだ。でも、ニュージーランドのように、定時になったら従業員はすぐ家に帰る、という社会では、ニュージーランドのバランスポイントでないと回っていかない。もしニュージーランドで日本と同じサービスの需給ポイントでバランスを取ろうとすれば、時間外労働が増えて、人々のワークライフバランスが大きく崩れるだろう。
今日もどこかの店で、今日からセールの商品の在庫がないということが、当たり前のように起こっているのだろう。
キックオフNZのSNS