新しい留学生との会話のルール
ニュージーランドの入国制限が5月から緩和され、長期留学生や短期留学生がNZ国内で留学をスタートさせることができるようになってから、ありがたいことに、弊社でも中学高校留学生やポリテク留学生が続々とニュージーランドに到着している。
彼ら彼女らを現地でサポートするときに注意していることはたくさんあるけれど、留学生との会話にもあるルールを設けている。
到着してすぐに最初に会ったときには、できるだけ、YesとかNo で答えられる、いわゆるクローズドクエスチョンから会話を始めるようにしている。
「飛行機は疲れましたか?」「入国はスムーズに行きましたか?」「日本は暑かったようですが、ニュージーランドは寒いですよね」など、簡単に答えられる質問からまずは始める。
そうすることで、留学生に、私たちとのコミュニケーションが始まったことを認識してもらい、留学生自身もそのコミュニケーションに参加しているのだと感じてもらう。つまり、私たちと留学生の間に双方向の関係を作り、私たちの質問にこれからも気軽に答えてくれる雰囲気も作り、加えてできれば留学生たちからも気軽に話をしてくれてもいいのだ、と気づいてもらう。
でも、ずっとクローズドクエスチョンばかりでは話も広がらないし、留学生の状況もわからない。クローズドクエスチョンがその役割を果たしたら次には、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンの中間のような話題に移る。
いきなり難しいことを聞いても答えに詰まってしまうことも多いので、まずは、「荷物はいくつ持ってきましたか」「英語はどのくらい聞き取ることができますか」「日本を出発するときにご家族はどんなことをおっしゃっていましたか」など、その留学生が経験したことを中心に、深く考えなくてもいいような質問をする。
そうすることで、留学生たちに、日本を出発してからそれまでの自分の経験を振り返ってもらい、その経験をもとに私たちとコミュニケーションをする雰囲気を感じてもらう。
次は、これからのこと、つまり未来のことについて少し話をする。留学をスタートさせてすぐなので、留学生自身は明日のことはもちろん今日これからのこともわからない人も多いから、これからのことを話すときには、私たちが持っている情報を伝える形で、その情報の理解を求めるような質問をする。
「学校初日はステイ先の人が送ってくれますが、二日目からは自分でバスに乗っていってください。バスの乗り方はステイ先の人が教えてくれます」「初日は、パスポートやビザ、ランチなどは最低限持っていってください」など、これからの未来に起こることを伝えることで、これから始まる留学生活を少しでも具体的にイメージしてもらい、その上で、できればあえて留学生から質問がでるような伝え方をする。たとえば「バスで学校までは何分くらいですか?」「それ以外に何を持っていけばいいですか」などの質問が留学生から出ればとてもいい。
そこまでうまくコミュニケーションができれば、次は、未来に対するオープンクエスチョンを留学生に投げかける。
「この留学の目的は何ですか?」「どうやって自分の目標を達成しますか?」など、自分がそれまでに考えてきたことで、かつこれからの留学生活に関係することを聞く。
そうすることで、具体的な情報のやり取りだけではなくて、留学生自身がすでに考えてきたことや持ってきたものを私たちに伝え、その「留学生自身の情報」をもとに私たちを話をする状況を作り出し、それもOKなんだ、と理解してもらう。
そして最後は、留学生活がある程度始まってから、総合的にいろんな情報をもとにして、留学生の考えや意見を聞く。
「ホームステイはどうですか?」「学校で困ったことなどはないですか?」「日本とニュージーランドの違いは感じましたか?」などだ。
その答えから、留学生の考えていることや感じていることもわかるし、ホームステイや学校でうまくいっているかどうかも、ある程度推測できる。また、始まったばかりの留学生活の中で、留学生がどんなところに注目し、どんな部分に目を向け、何を感じ、何を考えたのかもわかる。
ただ、留学生によっては、最後の質問になかなかうまく答えてくれない人もいるし、その質問をするタイミングまで少し時間がかかる人もいる。
こうやって、こちらが彼ら彼女らに投げかける質問によって、彼らに留学生活の道筋を理解してもらったり、彼らの状況をこちらが理解したり、小さな問題を発見したりすることもできる。
もちろん、この質問をすれば何もかもがわかるとか、こういう答えが返ってきたときにはかならずこういう状況だ、という魔法のようなコミュニケーションはない。何度も何度も同じことを聞いたり、留学生の言葉からいろんなことを想像したり、コミュニケーション自体がうまくいいかなかったり、こちらが予想しない答えが返ってきたり、そんなことを繰り返しながら、留学生と私たちの関係を少しずつ作っていき、その関係の中で、私たちもいろいろと考え感じながらうまくサポートをしていく。
それが、プロとして現地サポートをする私たちの役割であり、それによって、留学生たちの留学生活も少し変わって、できるだけ日本とは違う経験をして日本とは違う成長をしてくれることを、期待しているのだ。
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