NZの新しいCovid-19対策フレームワーク

先週の金曜日、2021年10月22日午前10時から、NZ首相が記者会見を開いて、Covid-19対策の新しいフレームワークについてアナウンスがありました。

「The COVID-19 Protection Framework」と呼ばれる新しいフレームワークは、 新型コロナウイルスのワクチン接種率が、対象者の90%を超えたことを前提に、導入されます。90%を超えるまでは、現在のアラートレベルのシステムが継続して使用されます。

The COVID-19 Protection Frameworkには、Green、Orange、Redの3つのレベルがあります。

感染の急拡大などによっては、現在のアラートレベルLevel 3やLevel 4 のような、地域を限定しての、あるいは全国規模のロックダウン措置を取る可能性も残されています。

<各レベル変更が検討される要素>
⁻ ワクチン接種の状態
⁻ 医療システムのキャパシティー
⁻ 検査、コンタクトトレーシング、感染者の把握と管理のキャパシティー
⁻ コミュニティ内での感染拡大

<ワクチンサティフィケイトの導入>
3つのすべてのレベルにおいて、ホスピタリティ施設(飲食店など)、集会、屋内屋外でのイベント、お客さんと接触するビジネス、ジム、そしてRedレベルでは大学・ポリテク・専門学校を中心として、ワクチンサティフィケイト(いわゆるワクチンパスポート)の利用が導入されます。

⁻ 一部の公共性の高いロケーション以外では、ワクチンサティフィケイトの導入は、任意(Optional)とされます。
⁻ 3つのすべてのレベルにおいて、すべてのビジネス、リテイルショップ、公共施設などが、ワクチン接種を終えた人々に対して営業(オープン)することができます。
⁻ ビジネス、イベント、組織、公共施設などは、お客さんに対してワクチンサティフィケイトの提示を求めるかどうかを、それぞれで選ぶことができることが、法的に認められます。
⁻ しかしながら、ワクチンサティフィケイトの提示を求めない場合は、営業(オペレーション)に厳しい制限がかけられたり、Orange、Redのレベルでは、営業できない場合があります。

The COVID-19 Protection Frameworkの、Green、Orange、Redの3つのレベルの詳細は以下の通りです。

< Green >
[ 状態 ]
感染が確認されても限定的で、医療システムは通常通り支障なく運営されている。

[ 生活で求められるもの ]
⁻ コンタクトトレーシング
⁻ 航空便内でのマスク着用義務と、屋内施設でのマスク着用の推奨

[ 一般に利用できる(オープンしている)場所 ]
⁻ 公共施設、リテイルショップ、職場、教育機関、屋外のコミュニティイベント。
⁻ 地域間の移動制限は設けられない。

[ ワクチンサティフィケイトが求められる場所 ]
(Green レベルでは、ワクチンサティフィケイトの提示を求める場合は、営業や運営に満たすべき条件は設定されません。)

⁻ ホスピタリティ施設
⁻ 集会
⁻ 屋内屋外でのイベント
⁻ お客さんと接触するビジネス
⁻ ジム

[ ワクチンサティフィケイトを求めない場合   =満たすべき条件 ]
(以下の条件を満たせば、ワクチンサティフィケイトの提示を求めなくても、営業・運営ができます。)

⁻ ホスピタリティ施設 =100名位内、1mのフィジカルディスタンス、着席、各グループが隔てられている
⁻ 集会 =100名位内、1mのフィジカルディスタンス
⁻ 屋内屋外でのイベント =100名位内、1mのフィジカルディスタンス、着席、各グループが隔てられている
⁻ お客さんと接触するビジネス =スタッフのマスク着用、お客さん同士の1m以上のフィジカルディスタンス
⁻ ジム =100名位内、1mのフィジカルディスタンス

< Orange >
[ 状態 ]
⁻ 感染が拡大しており、医療システムに負荷がかかっている。
⁻ 医療システムはリソースに集中しているが、プライマリーケア、公共医療、病院などは通常通りに運営されている。
⁻ リスクが高い人々に対するリスクが増加している。

[ 生活で求められるもの ]
⁻ コンタクトトレーシング
⁻ 航空便内、公共交通機関、タクシー、リテイルショップ、公共の場所でのマスク着用義務と、その他の場所でのマスク着用の推奨

[ 一般に利用できる(オープンしている)場所  =満たすべき条件 ]
(以下の条件を満たせば、営業・運営ができます。)

⁻ 公共施設 =人数制限と1mのフィジカルディスタンス
⁻ リテイルショップ =人数制限と1mのフィジカルディスタンス
⁻ 教育機関 =公衆衛生対策
⁻ オフィスなどの職場
⁻ 特定の屋外でのコミュニティイベント
⁻ 地域間の移動制限は設けられない。

[ ワクチンサティフィケイトが求められる場所 ]
(Orange レベルでも、ワクチンサティフィケイトの提示を求める場合は、営業や運営に満たすべき条件は設定されません。)

⁻ ホスピタリティ施設
⁻ 集会
⁻ 屋内屋外でのイベント
⁻ お客さんと接触するビジネス
⁻ ジム

[ ワクチンサティフィケイトを求めない場合 =満たすべき条件 ]
(Orange レベルでは、以下の条件を満たせば、ワクチンサティフィケイトの提示を求めなくても、営業・運営ができます。)

⁻ ホスピタリティ施設 =コンタクトレスのみ
⁻ 集会 =50名位内、1mのフィジカルディスタンス

⁻ Orangeレベルでは、屋内屋外でのイベント、お客さんと接触するビジネス、ジムは、ワクチンサティフィケイトの提示を求めない場合は、営業が認められません。

< Red >
[ 状態 ]
入院患者数の増加により、リスクが高い人々と医療システムを守る何らかの対策が必要。

[ 生活で求められるもの ]
⁻ コンタクトトレーシング
⁻ 航空便内、公共交通機関、タクシー、リテイルショップ、公共の場所でのマスク着用義務と、自宅外でのマスク着用の推奨

[ 一般に利用できる(オープンしている)場所  =満たすべき条件 ]
⁻ 公共施設 =100名位内の人数制限と1mのフィジカルディスタンス
⁻ リテイルショップ =人数制限と1mのフィジカルディスタンス
⁻ オフィスなどの職場 =在宅勤務を推奨
⁻ 教育機関 =公衆衛生対策
⁻ 特定の屋外でのコミュニティイベント =人数制限
⁻ 地域間の移動制限が求められる場合がある。

[ ワクチンサティフィケイトが求められる場所 =満たすべき条件 ]
(Red レベルでは、ワクチンサティフィケイトの提示を求める場合でも、営業や運営に満たすべき条件が設定されます。)

⁻ ホスピタリティ施設、集会、屋内屋外でのイベント、ジム =100名位内の人数制限と1mのフィジカルディスタンス
⁻ お客さんと接触するビジネス =公衆衛生対策
⁻ 大学・ポリテク・専門学校 =学内での対面授業では、ワクチン接種、人数制限、1mのフィジカルディスタンス

[ ワクチンサティフィケイトを求めない場合 =満たすべき条件 ]
(以下の条件を満たせば、ワクチンサティフィケイトの提示を求めなくても、営業・運営ができます。)

⁻ ホスピタリティ施設 =コンタクトレスのみ
⁻ 集会 =10名位内
⁻ 大学・ポリテク・専門学校 =ディスタンスラーニング(オンライン)のみ

⁻ Red レベルでは、屋内屋外でのイベント、お客さんと接触するビジネス、ジムは、ワクチンサティフィケイトの提示を求めない場合は、営業が認められません。

【 The COVID-19 Protection Frameworkへの移行について 】

現在アラートレベルLevel 2 の地域のすべてのDistrict Health Board(地区保健委員会)で、ワクチン接種率が90%を超えると、現在アラートレベルLevel 2 の地域は、The COVID-19 Protection Frameworkの<Orange レベル>に移行する予定です。

オークランド地域には3つのDistrict Health Boardsがありますが、3つの領域すべてが90%以上になれば、The COVID-19 Protection Frameworkの<Redレベル>に移行します。

ただし南島は、他地域に先駆けて、The COVID-19 Protection Frameworkに移行する可能性もあります。

ここまでが、先週の金曜日に、NZ首相からアナウンスされた、Covid-19対策の新しいフレームワークについてです。

ここからは、この情報の補足と弊社の見解です。

今回発表されたこの新しいThe COVID-19 Protection Frameworkは、情報量も多く、理解するのに時間もかかりますし、ややこしい部分もあります。

ニュージーランドのニュースの解説などを見ますと、Green、Orange、Redという、現在のレベルに変わるレベルシステムに移行するということを中心に解説されているものも多いですが、 弊社では少し違う角度からこの新しいフレームワークを捉えてみたいと思います。

この新しいフレームワークは、 ニュージーランド国内でワクチン接種率が90%を超えていることを前提に、 ワクチンサティフィケートを導入しながら、 「ニュージーランド国内の医療システムのひっ迫を防ぐことを最大の目的」にしています。

極端な言い方をしますと、 現在のアラートレベルのシステムを単に移行するという話ではなくて、 ワクチン接種率が90%の世界=「コロナ後の世界」での生活の基準を示したということだと思います。

つまりニュージーランド国内のワクチン接種率が90%に達した時点で、 そこからはもう今までとは違う「コロナ後の世界」に入る、というふうに考えるのがいいのではないか、と思います。

そしてそのコロナ後の世界では、 ニュージーランド国内の医療システムのひっ迫を防ぐことを最大の課題として、 新型コロナウイルスの感染の拡大をできるだけ抑えていく手段をとります。

したがって例えば、万一、新型コロナウイルスの感染拡大以外の何らかの事情によって、 すでにニュージーランドの医療システムがひっ迫している場合には、 新型コロナウイルスの感染確認者数がたとえ少なくても、 市中感染確認者が増加に転じた時点で、オレンジやレッドなどのレベルに移行することも、考えられるのではないかと思います。

つまり、新しいフレームワークの レベルの移行基準は、 市中感染確認者数ではなくて、 あくまでもニュージーランド国内の医療システムがどれだけひっ迫しているかという状態、ということになります。

言い換えますと、 たとえいくら新型コロナウイルスの市中感染確認者が増えたとしても、 ニュージーランドの医療システムに影響を及ばさないのであれば、 レベルはGreen のまま継続される可能性もあります。ベストケースはこのケースです。

そのために、 ワクチン接種率を90%以上に上げて、 一方でワクチン サティフィケイト を導入することで、 感染したり感染させたり重症化したりする可能性が高いと言われているワクチン未接種者 の 行動を、ある程度制限したり管理したりして、 地域や国内に感染が広がることを防ぐとともに、検査による市中感染確認者の発見、隔離、治療を迅速に進めて、 入院者や重傷者をできるだけ少なくして、医療システムのひっ迫を防ぐ ことができるようなシステムになっています。

ワクチン サティフィケイト の提示の有無で、営業や運営に特別に制限が課される分野は、現時点のアナウンスでは、ホスピタリティ施設(飲食店など)、集会、屋内屋外でのイベント、お客さんと接触するビジネス、ジム、そしてRedレベルで大学・ポリテク・専門学校です。

そしてワクチンサティフィケートを求められない場所でも、求められる場所でも、 レベルによっては何らかの営業や運営の条件がつきます。

また、ワクチンサティフィケイトが求められる分野で、お客さんや入場者に「ワクチンサティフィケイトの提示を求めない場合」という項目があるのは、 ワクチンサティフィケートの提示を求めることを、法的に強制できないという事情があるのではないかと思います。

従って、ホスピタリティ施設などのワクチンサティフィケートの提示が求められる分野でも、 「うちはお客さんにワクチンサティフィケートの提示は求めない」 という 飲食店が営業をすることも法的には可能だということです。 ただしホスピタリティー施設など対象の分野で、もしワクチンサティフィケイトの提示をお客さんに求めないのであれば、 営業するうえで、他と比べて厳しい条件が課されます。

この新しいフレームワークの詳細はまた11月以降にアナウンスされることになっています。

今後ワクチン接種率が90%を超えるまでは、ワクチン接種率が、どの地域で、いつ、どの程度まで上がるのか、がとても大きなポイントになってきます。

ワクチンデータは以下を参考にご覧ください。

COVID-19: Vaccine data
https://www.health.govt.nz/our-work/diseases-and-conditions/covid-19-novel-coronavirus/covid-19-data-and-statistics/covid-19-vaccine-data

COVID-19 vaccination rates around New Zealand(地域別データ)
https://covid19.govt.nz/alert-levels-and-updates/covid-19-data-and-statistics/covid-19-vaccination-rates-around-new-zealand/

新しいフレームワークの情報は以下からご覧ください。

The COVID-19 Protection Framework
https://covid19.govt.nz/alert-levels-and-updates/covid-19-protection/

The COVID-19 Protection Framework(一覧表 PDF)
https://www.documentcloud.org/documents/21089980-covid-19-protection-framework

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