ロックダウンですと言われただけなのに
ニュージーランドは2021年8月18日(水)から全土でロックダウンになっている。
前日にオークランドで一人の市中感染が確認されたからだ。
市中感染が確認された日の午後6時10分(NZT)からNZ首相と保健省長官が緊急記者会見を開き、「午後11時59分(NZT)から、NZ全域のアラートレベルをLevel 4に引き上げ、ロックダウンに入る」とNZ首相が壇上からアナウンスした。
ロックダウンでは、ほとんど全てのビジネスは営業できず、学校も原則休校で、外出は基本制限され、自分のバブル以外の人と会うときは2m以上のフィジカルディスタンスが求められる。また、スーパーマーケットに行くときにはマスクをするなどの、いろんなルールも定められている。
そして、8月18日から、ニュージーランドにいる500万人の人たちが一斉にロックダウンに入った。
これはどう考えればいいのだろうか。
NZ首相が午後6時過ぎに「明日からロックダウンです」と言っただけだ。ただそれだけで、それをテレビやネットで見た人が、ロックダウン状態に入る。
もし500万人の誰もテレビやネットを見ていなければ、次の日も人々は仕事をして、学校に行き、それまでと同じ日常生活を送っていたのだろうか。
もし首相のアナウンスを聞いた人が全員いうことをきかずに、仕事をして、学校に行き、それまでと同じ日常生活を送っていたら、どうなっていたのだろうか。
もしNZ首相ではなく私が同じことを言ったら、500万人はロックダウンに入っただろうか。
もちろん、法律もあるし、罰則もある。政治の仕組みもあるし、民主主義の国でもある。
そうなんだけれど、一人の人が「明日からロックダウンです」と言っただけで、それを聞いた500万人が行動を変える。しかも、自分にとって不都合な、不利益な行動でもそれをする。
そのとき、人々は何を感じ、何を考え、どう判断して、そんな行動をとるのだろうか。
NZ首相が言ったから、法律だから、罰則があるから、みんなのことを考えて、ウイルスを抑え込まないといけないから、みんながそうするから、そのほうが自分に都合がいいから。いろんな理由はあるだろう。
でも、理由があっても、そうしない、という選択もできるのだ。実際に外に遊びに出ている人もいるし、一人ひとり監視されているわけでもない。もし500万人が一斉に遊びに出たらだれも止められないだろう。
でもほとんどすべての人たちは、明日からロックダウンですと言われただけで、ロックダウン状態に入る。
そのときの、一人ひとりの心理、考え、判断、そして行動が、とても興味深く、そこをもっと考えてみると、人間の中にあるいろんなものが見えてくると思うのだ。
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