レントゲン撮影

ひざの調子が悪くて医者に行ったのが6月中旬。医者に血液検査とレントゲンを撮った方がいいと言われて、レントゲンの予約をすると、7月上旬まで空いていないと言われた。

そして先日、ロトルアの市民病院に行って、レントゲンを撮ってきた。医者にレントゲンを撮ったほうがいいと言われてから実際にレントゲンを撮るまで3週間以上も待たされるということは、ものすごく混んでいるのだろう、と思って、予約の時間よりも少し早めに着くように行った。

受付で名前を伝えると、すぐに、やさしそうな普段着の年配の女性が呼びに来てくれた。その人について歩く廊下の両側には、おそらくレントゲンを撮影するだろうと思われる部屋がいくつかあった。でも、受付にも、レントゲン撮影室にも、人の気配はなかった。廊下を歩いていたのは、私とその年配の女性だけだった。一言で言うと、誰もいなかった。

何故3ヶ月も待たされたのだろう、という疑問を抱きながら、案内された部屋に入ると、縦6メートル×横7メートルくらいの、天井の高い部屋の真ん中に、ぽつんとベッドが置いてあり、その上に、なんだか知らないけれど大きな機械が天井からぶら下がっていた。

私がベッドに横になると、その女性は私のひざの下に反射板のようなものを敷いて、その天井からぶら下がっている大きな機械をひざの上にあてると、「少し待ってください」と言って、隣の部屋に入っていった。おそらく「カシャッ」というような音が1回だけして、またその女性が戻ってきた。今度はもう片方のひざを同じようにセッティングして、また部屋を出て行った。

そのときになって初めて、「この女性はレントゲン技師で、今私はひざのレントゲンを撮られているんだ」ということがわかった。普段着を着ていたし、受付まで私を呼びにきたので、すっかり案内係の人だと思い込んでいた。まさか案内係の人がレントゲンを撮ってくれるとは思ってもいなかったので、撮影は他の人がやってくれるのだと、信じて疑わなかった。

その大きな機械をベッドの上で2回カシャッといわせると、今度は、部屋の隅にある四角い板の前に立ってください、と言われた。板の前には何もなかったので、ひざをたたいたりして検査をするのかと思って、言われたとおりに立つと、その女性は、それまでベッドの上で天井から釣り下げられていた大きな機械を、「ぐいーん」とその板の前、つまり、私のひざの前まで持ってきた。その機械には、伸び縮みするアーム状の棒のようなものが着いていて、自由に先端のレントゲン撮影機を動かせる仕組みになっていたのだ。

その女性は、「もう少しひざを左に向けて」などと言いながら大きな機械を私のひざの前にセッティングすると、また部屋を出て行った。6メートル×7メートルの大きな部屋の片隅で、天井からアームで吊り下げられている大げさな機械をひざの前にあてられて、少しひざを左に向けて立ちながら、私はおかしくておかしくて、一人クスクスと笑っていた。

だって、大きな部屋の隅っこで、しかも大きな機械の前で、「ひざ」のレントゲンを撮っているのだ。これがまだ、体の重要などこかの骨が折れているのが確実だ、などの症状であれば、この大きな部屋と大きな機械もマッチするのだろうし、とても有効に使われていると感じるのだろうが、普通に歩いて普通に車も運転できる私の、しかも「ひざ」のレントゲンを撮るには、あまりにも大げさに感じたのだ。例えて言えば、小さな虫を一匹退治するのに、よろいかぶとを着て弓矢を引いているような感じだ。

レントゲン撮影は10分くらいで完了した。

そして今日、医者に結果が届いたというので、会いに行ってきた。お医者さんは私のレントゲンの結果と血液検査の結果を見て、一言こう言った。

「全てノーマルです。」

長くて、そして少し面白い道のりだった。

キックオフNZのSNS