現地サポート
留学に来た学生達には、日本ではできないいろんな経験をしてほしいと思っている。そして、その経験を通して、自分で考えて行動する、という態度を留学中に是非身につけてほしいと思っている。
例えば、「ホームステイマザーに伝えたいことがあるけれど、不満を言っているように思われるのも嫌だし、英語でどう言っていいのかわからないので、代わりに伝えてほしい。」という電話を留学生からもらうこともある。「わかりました、今ホストマザーがそこにいるのなら、こちらから英語であなたが言いたいことを伝えましょう。」というのが、留学生にとっても、そして私たちにとっても一番簡単なサポートだ。そして、そういうサポートを望んでいる方もいらっしゃると思う。
でも、私たちは、基本的にはそういう返答はしないようにしている。私たちが留学生からもらった電話で彼ら彼女らに伝えることは、「まずは、自分でどう言えばいいのか考えてください。そして、自分で考えた言葉で自分でホストマザーに伝えてみてください。」と言う。もちろんそれぞれの留学生の年齢や、留学期間、その人の英語力や性格、持っている力、そしてホームステイマザーとの関係、などを考慮して、それぞれの学生にできるだけ合った返答をするようにしている。でも、基本的には、「まずは自分で考えて、自分でやってみてください。」と言う。
「いやいや、ちょっと待ってくれ。そんなのサポートでも何でもないじゃないか。」とおっしゃる方もいるだろう。おっしゃる通り、「留学生が望むことをそのまま望む通りにやることが現地でのサポートだ」とお考えの方にとっては、私たちのやり方はサポートではない、と感じるかもしれない。
しかし、私たちはそれは承知の上で、やはり基本的には、「まずは自分で考えて、自分でやってみてください。」と留学生に言う。何故なら私たちは、「留学は経験である」と考えているし、「留学中の経験を通して、自分で考えて行動する、という態度を身につけてほしい」と願っているからだ。
だからもし私たちが、「今ホストマザーがそこにいるのなら、こちらから英語であなたが言いたいことを伝えましょう」というサポートをしてしまうと、せっかくの留学生の「経験」のチャンスを私たちが自ら奪ってしまうことになるし、「留学中のいろんな経験を通して自分で考えて行動する、という態度を身につける」ということもできなくなってしまう。
実際には、「まずは、自分でどう言えばいいのか考えてください。そして、自分で考えた言葉で自分でホストマザーに伝えてみてください。」などと伝えた留学生の約半数くらいからはまた電話がかかってきて、「どう言えばいいのかわからない」とか「自分で考えて伝えてみたけれど、伝わっているのかどうかわからない」などということがある。あるいはホストマザーから連絡があって、「○○がこんなふうに言っているのだけれど、どういうことだろうか。」ということもある。
「どう言えばいいのかわからない」という留学生には、「伝えたいポイントだけを簡潔に伝えればいい。英語がわからなければ、日本語で考えてそれを英語に直したものをこちらでチェックします」などと言うし、「伝わっているのかどうかわからない」という留学生には、状況をよく聞いた上で、「もしほとんど言いたいことが伝わっていないと感じるなら、もう一度紙に書いて渡してみてはどうか」と言ったりとか、必要であればホストマザーに連絡を取ったりもする。また、ホストマザーから連絡を直接もらった場合でも、できるだけ留学生とホストマザーとのコミュニケーションの機会を増やすようなアドバイスをする。
サポートする私たちもエネルギーと手間と時間がかかる。私たちが直接ホストマザーに電話で伝えれば5分ですむことが、何日間にも渡って問題が解決しないこともある。でも、その時間は留学生達にとっては、日本ではできない経験をする時間であるし、自分でいろいろと考えて、自分で考えたことを実践してみる時間でもあるのだ。そして、その時間に留学生が経験することが、彼ら彼女らにとってとても大切なのだと思う。たとえそれで結果がうまく行かなくても、失敗しても、間違っても、そこから学ぶことは山のようにあると思う。
だから、留学して数ヶ月や、2年目、3年目になると、留学生達は自分で考えて行動できるようになってくる。周囲の人たちが自分のために必ず何かをしてくれるだろうという期待や甘えを捨てて、自分で考えて自分が動かないと、自分の置かれている状況は変わらない、ということに気づく。そして、英語を使って周囲の人たちとコミュニケーションを取ろうと動き出し、英語力がついて、その結果生活もうまく回り出す。
留学中に日本ではできない経験をして、その経験を通じて自分で考えて行動する、という態度を身につけてもらうようにサポートをする。それが私たちのサポートのやり方だ。
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