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お宅のお子さんはほんとうにかわいいですね、と言われたら、日本なら「そんなことないですよ。」と謙遜する。

でも、ニュージーランドでそう言われた親達は、「はい、そうなんです。とてもかわいいんです。」と真顔で返す。時にはさらに、「髪の毛の色もいいし、笑顔もかわいいでしょう。」などという文言が加わることもある。日本で生まれ育った私たちには、なかなかなじめない文化だ。

ニュージーランドで生まれてニュージーランドで育っている私の娘も、たまにかわいいなどとほめられることがある。最初は「そうなんです。」とはなかなか言えなかったが、「No she isn’t」 と言っても相手は変な顔をするし、黙っていたら聞こえなかったと思われてもう一度同じようにほめられることもある。だから最近は、「そうなんです。」と言うことにしている。最初はどうもこそばゆいというか、いごごちが悪いというか、変な気分だったが、最近は慣れてきて、自信を持って「そうなんです。」と言うようになってきた。

こうなってくると親というのはなかなか歯止めがきかないもので、日本から来た方に「かわいい娘さんですね。」などとお世辞を言われても、つい、「そうなんです。」と応えてしまい、一瞬なんとも言えない冷たい空気が流れる。私の血を受け継いでいる娘がそんなにかわいいわけはないことは十分承知しているのだけれど、いつもの習慣でつい、そうですと返してしまう。

例え現実を認識していたとしても、例えそれがお世辞だとわかっていたとしても、親が子どもをほめられたときに、「そうです、その通りです。」と言っていると、だんだん自分の子どもをより誇らしく感じるようになってくるから不思議だ。そしてその誇らしく思っている気持ちは、どうも子どもにも伝わるようだ。

親が子どものことを誇らしく思ってくれている、と子どもが感じることは、とてもいいことだと思う。ニュージーランドの親は、I’m very proud of you などと子どもに対して言うことが多い。日本ではなかなか使わないフレーズだ。

親が子どものことを誰かにほめられる時、そこには、親、子、他人、の3者がいる。日本のように「そんなことないですよ。」というのは、親が他人、つまり社会に対して放っている言葉だ。でも、ニュージーランドのように「はい、そうなんです。」というのは、他人に対して言っているようでいて実は、自分の子どもに対して、そして、自分自身に対して言っている言葉であるように思う。親が子どものことをかわいいと思っているのなら、自分の子どもを誇りに思っているのなら、他者に気を使うよりも、自分と子どもの関係を優先させる。誰かに子どもをほめられたことを肯定することで、親は子どものことをかわいいと思っているし誇りにも思っている、ということを、そこにいる子どもに伝え、親自身も確認することができるのだろう。