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北風と太陽というイソップ寓話がある。

北風と太陽が、旅人の上着を脱がせることができるかという勝負をする話だ。ここから得られる教訓は、人を動かす時に厳しい態度で臨むのか暖かく優しい態度で臨むのか、ということ、などと言われている。また一説によると、この話の前に旅人の帽子を脱がせる勝負があって北風が勝ち、何事にも適切な手段が必要だという教訓を得られるという話もある。

私は子どもの頃からこの寓話に少し違和感があって、「この話は最初からなんか変だ」と思っていた。そして後年気がついたのは、そもそも勝負の前提が間違っている、ということだった。

北風と太陽が旅人を見つけたときには、すでに旅人は上着を着ていたのだから、当然寒かったはずだ。少なくとも暑くはなかっただろう。そんな状況で北風がビュンビュン寒い風を吹かせても、旅人は上着を脱ぐはずはない。なぜなら元々寒かったのだから。でも太陽が燦々と照って暑くなれば、当然旅人は上着を脱ぐ。

つまりこの勝負は初めから太陽が勝つことが決まっていたのだ。

もしこれが真夏のビーチで、水着の旅人に服を着せる勝負であれば、北風が勝っていただろう。

だから、ここから得られる一つの教訓は、「勝負をする前には、状況をよく把握しなければならない」ということであり、「負ける勝負は初めからするな」ということだ。

さらに少し考え方を変えてみれば、旅人が上着を脱いだのは、寒さが和らぎ暖かくなったから、つまりそれまでと環境が変わったからだ。だからここから得られる教訓の一つは、「人間は、環境を変えないままそれをさらに厳しくするのではなく、環境を変えることで自ら動くようになる」だと思う。

例えば、ある場所、ある組織で一所懸命がんばっている人にさらにがんばれと言うのではなく、違う場所、違う組織に移すことで環境を変えれば、その人自らが動き実力が発揮できる、などが考えられる。

今いる環境で自ら動かない人がいるのなら、環境を変えればいい。冬に北風を吹かせることで人を動かすのではなく、冬から夏に環境をかえることで自ら動くチャンスを与える。

北風と太陽から、そんな教訓を導き出すこともできるだろう。少し無理矢理だけれど。